1回目「ビジネスロジックのみで開発!Magic xpaはユーザーにもメリットある開発環境」、2回目「コードを書かないプログラミングMagic xpaの開発を体験」と紹介してきた本連載もいよいよ最後。本稿では実際にMagic xpaで構築したビジネス基盤により他社との差別化に成功したエフピーステージと、その構築を一任されているダイレクト・コンサルティングにMagic xpaの特徴とメリットを伺った。

エフピーステージ株式会 社代表取締役 五島聡氏

五島聡氏が代表取締役を務めるエフピーステージは、主に法人向けの保険営業マンを育成する「戦略法人保険営業塾」を事業の1つとして営んでいる。営業ノウハウや知識を習得するためのセミナーやメールマガジン、Webマガジンの提供だけでなく、Magic xpaを用いて新たに開発されたクラウド型顧客コミュニケーションツール「カスタマービジョンサポート(CVS)」の提供によって、保険営業の最適化とビジネスモデルの構築をサポートする。

保険業界は、安価なネット保険や巨大な総合乗合代理店の登場によって、競争は激化の一途をたどっている。その中で、保険営業マンが生き残り、成功するためには、強力な武器が必要だ。

「企業経営者が希望していることは、自らのビジョンを実現することです。情緒的な“なんとなく”という経営を、物理的に“何をどうすればよいのかわかっている”という経営に変え、黒字を最大化したいと考えています。保険と保険営業マンは、そうしたお客さまのビジョンの具現化・達成を支えるものでなければなりません。CVSは、そうした営業マンを強力にサポートするツールです」(五島氏)

CVSの開発は、Magicシリーズで20年以上の開発実績を誇るダイレクト・コンサルティングが担当した。ではどのようにして同社は、五島氏が持つ“ノウハウ”や、保険営業マンが実現したい“セールスプロセス”を、システムに具現化したのだろうか。

保険営業マンのセールスプロセスをシステム化する

CVSで提供されている機能のは大きく3つ、顧客管理(個人情報、資産・負債情報、課題、将来プランなど)とメールマガジン(編集・配信)、そして全文検索の機能だ。

顧客管理は情報が多岐に渡り、全てを把握できている営業マンは少ないのが実情である。専門のシステムが必要となる分野も多く、当然紙の手帳などでは追い切れない。しかし、顧客のビジョン達成という面ではなくてはならない情報管理である。メールマガジン機能では、保険営業塾から配信されるテンプレートを基に、個々の顧客に応じ編集して送付ができる。きめ細かい活動が可能となる目玉の機能である。全文検索は、顧客情報や商品情報、税制資料などをすばやく探すことができ、特に社外活動で役に立つ機能である。

このCVSの開発は、ダイレクト・コンサルティングのマネージャーである那倉慎一氏が主に担当した。

ダイレクト・コンサルティング株式会社 マネージャー那倉慎一氏

「五島氏は、Excelに画面のイメージなどを描いて、実現したいアプリケーションのコンセプトを細かく作りこんでいました。もちろんデータベースやシステムについての仕様があったわけではありませんが、叶えたい仕組みというものがよく伝わってきたので、少し手直しして、数回すり合わせをしただけで実際の製作に入りました」(那倉氏)

もちろんこれは、Magic xpaがアジャイル開発に最適なツールであるという表れでもある。一般的な開発であれば、仕様を細かく詰めてから製作にかかるため、プロトタイプですら長時間の開発期間がかかってしまう。Magic xpaであれば、コンセプトからいきなり画面を作って見せることも可能で、余計な作画に時間を取られることもないし、実際に画面を操作できるので意見も吸収しやすい。

遠隔地からの確認とフィードバックを短期間で繰り返す

ダイレクト・コンサルティングは、1か月半ほどでプロトタイプアプリケーションを提出した。と言っても、マニュアルなく扱えるPC版のRIAアプリケーションであるから、AWSクラウドに評価用環境を用意してアップロードし、遠隔地の五島氏にメールで確認を依頼するだけだ。これも、Magic xpaのアジャイル開発の軽快さと言えるだろう。

最初の時点で、那倉氏によれば50%、五島氏は“かなり完成していた”という印象を持つほどだった。PC版CVSの開発は、2012年10月から12月の3か月で完了した。プロトタイプの提出以降も、数回の修正や調整を行った程度で、開発はスムーズかつスピーディに行われた。

Magic xpaは、複数の開発者でも齟齬なく開発を行うことができ、タイプミスなどによるバグがほとんど発生しないツールである。もしアプリケーション全般に影響する修正があったとしても、影響範囲をもれなくチェックし反映できるような仕組みも備わっている。だからこそ、開発期間を短縮することができる。

「Magic xpaは、ビジネス(ビジネスロジック)に特化したツールですから、派手なアプリケーションを作れるわけではありません。しかし、だからこそシンプルで誤りが少なく、ユーザーの使い勝手に集中できるという面もあります」(那倉氏)

モバイル版CVSも新機能を追加しながら迅速に開発

CVSの開発当初は、モバイル版への対応は想定されていなかったが、開発途中にMagic xpaのAndroid対応が発表されたこともあり、五島氏との相談でやってみようということになった。

「保険営業は、想像どおり外出が多いビジネスです。ただ、使い勝手は非常に重要ですし、入力ミスなどがあっては困りますから、モバイル版は情報の検索と閲覧のみに絞ることにしました」(五島氏)

モバイル版の開発は、PC版の完成直後、2013年1月後半から3月までの約2か月で完了した。

「Android対応は急遽決まったことですが、Magic xpaがデバイスの差を吸収してくれることはわかっていたので、実はそれほど心配はしていませんでした」(那倉氏)

モバイル版には、新機能として、タブレット端末のGPSを活用した「付近検索機能」が追加されている。現在地点から指定距離範囲の顧客を地図上に表示して、情報を参照することができる。

詳細検索

付近検索

  「1日に訪問できる件数には限りがあります。だからこそ、地図を使った事前の計画は非常に重要です。また、ある商談が短時間で終わった場合や、年末年始の挨拶にカレンダーを配りたい場合など、短い時間を有効に活用したいというニーズもあります。付近検索機能を使えば、時間を最大限に活用することができるのです」(五島氏)

この機能は、マジックソフトウェア・ジャパンが提供するアプリケーションテンプレートで容易に作ることができた。地図連携のサンプルプログラムをコピーして、CVS用にパラメータを調整しただけだという。純粋なAndroidプログラミングをしたら、2か月では開発を終えることはできなかっただろうと、那倉氏は述べる。

PC版顧客検索

今後もさらに進化を期待できるCVS

Magic xpaによるアプリケーション開発について、那倉氏によれば、まずシンプルに作ること、そして使い慣れてきたユーザーのフィードバックを基に、よりよく改善したり機能を追加したりしていくことがポイントであると述べる。

「特にモバイル版は、情報を読む部分はともかく、ボタンやタップするエリアを広めに取らなければ使いにくいため、この調整がポイントになります。プロトタイプを実際に使っていただきながら、細かくユーザビリティを改善していきました」(那倉氏)

現在では、CVSへの要望も少しずつ出てきており、より細かな操作性の向上や便利機能の追加も検討しているとのことだ。

「現在CVSは、問題なく稼働していますが、まだまだ完成版ではありません。教育コンテンツとからめた新しいサービスも展開していきたいと考えています。レベルの高い開発を行ってくれるダイレクト・コンサルティングはもちろん、将来的に新しいデバイスやOSが出てきたとしても継続的に資産を活用できるという点で、Magic xpaとマジックソフトウェアも信頼に値します」(五島氏)

本連載により、改めてマジックソフトウェアが提供するMagic xpaのすばらしさがご理解頂けたのではないでしょうか。開発側はもちろんのこと、そのビジネスモデルを導入する企業側にこそ真のメリットがあるのではないかと、筆者は思う。