AMDは9月9日(米国時間)、組み込み向けコンピューティング市場における組み込み向けSoC「AMD Embedded Gシリーズ」製品に続く製品ロードマップとして、低消費電力と高性能の両方が求められる分野向けにクラス最高のx86 APU(Accelerated Processing Unit)およびCPU各製品ならびに、未発表のARMコア搭載SoC、2014年に発表予定のGPU「AMD Embedded Radeon」などを発表した。

AMDの組込向けソリューションの概要と、組み込み分野の各種市場規模と成長性

同ロードマップによると、同社は2014年に「AMD Embedded Rシリーズ」として、ARM Cortex-A57アーキテクチャをベースとするSoCシリーズ「Hierofalcon(ヒエロファルコン)」を2014年第2四半期からのサンプル出荷および下半期からの量産開始を計画しているほか、x86マイクロプロセッサ・アーキテクチャをベースとするAPU/CPU「Bald Eagle(ボールド・イーグル(コードネーム:Steamroller))」を2014年前半に市場投入する予定としている。

CPUアーキテクチャ別の市場シェア。このうち、x86とARMの両方をAMDは狙えるようになる

AMDが提示した2014年までの組込分野向け製品のロードマップ

Hierofalconは、組み込み型のデータセンター・アプリケーション、通信インフラおよび産業用ソリューション向けに提供される64ビットARMベース・プラットフォームで、最大8基までのCortex-A57を搭載し、最大2.0GHzで稼働する高信頼アプリケーション向けのECCを備え、2つの64ビットDDR3/4チャネルの高性能メモリを搭載するほか、高速ネットワーク接続用に10Gb KR EthernetおよびPCI-Express Gen 3をサポート。また、ARM TrustZoneテクノロジーおよび専用の暗号化セキュリティ・コプロセッサをサポートすることで高度なセキュリティを実現し、増加しているネットワーク接続されたセキュアなシステムへのニーズに対応することが可能だという。

一方のBald Eagleは、x86をベースとする次世代の高性能組み込みプロセッサで、APUとCPUの両方で利用可能で、最大で4基のSteamrollerコアを35WのTDPに収めている。また、APU製品では、消費電力を最適化する、新しいAMD Radeon Graphics Core Next(GCN)GPUアーキテクチャをサポートしているという。さらに、高性能組み込みアプリケーションを目指したHSAの強化により、次世代デジタル・サイネージおよび組み込みデジタル・ゲーミングのソリューションを実現しているほか、同ファミリーには消費電力管理機能も新たな特長として追加されており、それによりTDPの設定が可能となり、エンジニアの設計柔軟性の幅を拡張することが可能となっている。

加えて、2014年前半に発売される予定のAPUとして、「Steppe Eagle(ステッペ・イーグル)」も発表。同APUは、CPUおよびGPU周波数増加のためのJaguarコア・アーキテクチャとAMD GCNアーキテクチャの強化により、既存AMD Embedded GシリーズAPUプラットフォームの性能と省電力性をさらに向上させることに成功しており、従来のEmbedded Gシリーズより低いTDPながら2GHz以上の動作周波数でワットあたりの性能向上が実現される。また、Embedded Gシリーズの現行のボードデザインとフットプリントに互換性のあるさまざまなアプリケーションのソフトウェアのスタックを活用する柔軟性も組み込み設計エンジニアに提供されるという。

このほか、組み込みシステム向けに設計されたGCNアーキテクチャをベースにした次世代のAMD Embedded Radeon GPU「Adelaar(アデラール)」も発表。市場において差別化を図ることを目的に2GBのグラフィックスメモリと統合されたマルチチップ・モジュール(MCM)として提供される。高品質な3Dグラフィックス、マルチディスプレイ・サポート、DirectX 11.1、OpenGL 4.2、そしてWindowsとLinuxの両方をサポートしており、2014年前半からの提供が予定されているほか、MCM、モバイルPCIエクスプレス・モジュール(MXM) 、標準型PCグラフィックスカードとして、7年間のサプライ提供期間が予定されているという。

なおAMDでは、今回のARMプロセッサの提供発表により、低消費電力かつ高性能な組み込み型コンピュート設計向けにARMおよびx86双方のプロセッサ・ソリューションを提供する業界初のベンダとなり、今後は、提供する製品において、WindowsおよびLinuxを含む複数のOSをサポートする、幅広いソフトウェアおよびハードウェアのパートナーのエコシステムと共に、インテリジェントな組み込みデバイス市場を積極的に追求していく計画としており、特に以下の分野に注力していく方針としている。

  • 産業制御および自動化
  • デジタル・ゲーミング
  • コミュニケーション・インフラストラクチャ
  • ビジュアル組み込み(デジタル・サイネージ/シンクライアント/医療画像/オート・インフォテインメント)
  • セット・トップ・ボックス/インターネット対応スマートTV
  • 印刷/画像処理
  • デジタル監視
  • ストレージ
  • 軍事/航空