近畿大学(近大)は9月4日、サプリメントなどとして注目度が高い、多数のグルコサミンが鎖状に連なった多糖類の一種である「キトサン」を混合物の中から捕らえるタンパク質を発見し、その仕組みを明らかにしたと発表した。

同成果は、同大農学部バイオサイエンス学科の深溝慶 教授、同 新家粧子 博士後期課程2年、同 大沼貴之 講師、福井県立大学の木元久 教授、福井工業大学の草桶秀夫 教授らによるもの。詳細は米国生物化学雑誌「Journal of Biological Chemistry」に掲載された。

キトサンは血中コレステロール低下や整腸作用、脂肪吸着などの効果で知られ、病気の予防やダイエットのサプリメントなど機能性食品として活用されているが、その多くはエビやカニなどの甲羅から抽出されている。現在、この抽出過程では、高濃度の酸・アルカリといった大量の廃棄物が発生しているほか、得られるキトサンも甲殻類アレルギーの原因となりうることから、キトサンだけを効率よく捕らえる方法の開発が求められていた。

そこで研究グループは今回、キトサンを捕える働きをもつキトサン加水分解酵素というタンパク質に対して研究を進めたところ、それらの中の1つ「Paenibacillus sp. IK-5由来キトサン加水分解酵素」に存在する「ディスコイジン・ドメイン」に、さまざまな糖質を混合させた結果、キトサンだけが結合することを発見したという。

また、同タンパク質を用いた抽出では、従来用いられていた高濃度の酸やアルカリといった廃棄物を伴わないため、環境負荷を減らすことが可能になるという。

そのため、研究グループでは今後、食品に利用されるキノコやカビ類などからも、安全に良質なキトサンやグルコサミンを効率よく生産することが可能となり、血中コレステロールを低下させるためのサプリメントなどの機能性食品に応用が図られていくことが期待されるとコメントしている。

キトサンだけを捕えるタンパク質を活用することで、容易に良質なキトサンの大量生産が可能になる