米国VMwareは8月26日(米国時間)、同社の提唱する「Software-Defined Data Center(以下、SDDC)」をより具現化するための製品群を発表した。

これはサンフランシスコで開催中の同社の年次コンファレンス「VMworld2013」で明らかにされたもの。

SDDCは、サーバリソースやネットワークだけでなく、ストレージやセキュリティといったデータセンターの構成要素をすべて仮想化し、ポリシーベースで自動化する概念である。

今回発表されたのは、ネットワーク仮想化プラットフォームである「VMware NSX」、仮想マシン向けストレージの「VMware Virtual SAN」、統合的なクラウドインフラおよび管理スイートである「VMware vCloud Suite 5.5」、仮想プラットフォームの容量を最適化する「VMware vSphere with Operations Management 5.5」の4製品。

昨年買収のNVPを統合した新ネットワーク製品 - VMware NSX

「VMware NSX」はVMwareが2012年に買収したネットワーク仮想化ベンダーの米国Niciraが提供する「NVP」と、「VMware vCloud Networking and Security」を統合したソリューションである。2013年3月に製品名は発表されていたが、機能詳細を明らかにしたのは、今回が初めてとなる。

VMware NSXは、サーバ仮想化と同様、物理ネットワークを必要に応じて消費/再利用可能なリソースプールとして取り扱うことができるものだ。また、仮想ネットワークは既存のIP接続の物理ネットワークを利用し、プログラムを通した作成/プロビジョニング/管理が可能となる。

VMware NSXは分散アーキテクチャをベースにしており、ネットワークサービスはハイパーバイザのカーネルと統合されている。これにより、アプリケーションのニーズに応じてハイパーバイザと共にネットワークサービスをスケールアウトできる。また、ソフトウェアでレイヤサービスを提供しているため、顧客はサーバノードを追加するだけでインフラを拡張することが可能だ。

VMware NSXは最大1TB/秒(32ホストのクラスタあたり)のネットワークトラフィックを処理することが可能。今回のカンファレンスで20以上のパートナーがVMware NSXへのサポートを表明した。なお提供開始は、2013年第四半期を予定しているという。

仮想マシン向け高性能/高可用性ストレージ - VMware Virtual SAN

VMware Virtual SANは、VMware vSphereの機能を、直接続型ストレージのリソースのプール化にまで拡大するものである。サーバのディスクとフラッシュをクラスタリングした「仮想データプレーン」を提供し、仮想マシン向けに高パフォーマンスで耐障害性を備えた共有ストレージの作成が可能になる。VMware NSXと同様に、アプリケーションのニーズに合わせてストレージサービスをリニアに拡張できる分散アーキテクチャがベースとなっている。

同社は、VMware Virtual SAN は、サーバ内蔵のSSDやHDDを利用することで、仮想デスクトップ(VDI)やテスト/開発などの環境でTCO(総所有コスト)を大きく削減できるとしている。新しいサーバを必要に応じて追加するだけでストレージのパフォーマンスと容量を拡張できるため、顧客は小規模での導入が可能になるという。なお、VMware vSphereやVMware vCenter Serverと統合されたVMware Virtual SANは、2013年第3四半期中に、無料のパブリックベータプログラムを通じて提供される予定だという。

アプリ/OSの障害検知機能を搭載 - VMware vCloud Suite 5.5

VMware vCloud Suiteは、仮想化プラットフォームであるvSphereを基盤に構築されている。最新版である「VMware vCloud Suite 5.5」は、アプリケーションやOSの障害を検出して回復する「vSphere App HA」が備わった。また、サーバ内蔵のフラッシュを仮想化してアプリケーションのレイテンシーを削減する「VMware vSphere FlashRead Cache」を搭載しているほか、大きなレイテンシが許されないアプリケーションへのレスポンスタイムを向上させる機能も追加された。同社によると、従来のバージョンと比較し、2倍の物理CPU/メモリ/NUMAノードがサポート可能だという。

さらに「VMware vSphere Big Data Extensions」を利用すれば、顧客はVMware vSphere 5.5上で「Apache Hadoop」やビッグデータのワークロードを、その他のアプリケーションと同時に稼働させることができるようになる。また、インテルの「XeonプロセッサE5 v2」および「AtomプロセッサC2000」をサポートした。ただし、ARMプロセッサのサポートについては「検討中」(同社)だという。

稼働状況を可視化し最適化 - VMware vSphere with Operations Management 5.5

「VMware vSphere with Operations Management 5.5」は2013年2月に発表されたもので、vSphereと、ワークロードキャパシティとシステムの状態に関するインサイトを提供する機能を組み合わせた製品である。同製品により顧客は、IT環境全体のパフォーマンスをプロアクティブに監視、管理しながら、統合的なキャパシティプランニングを通じて環境を最適化できる。

米国VMwareでクラウドインフラストラクチャおよび管理ソリューション担当上席副社長を務めるRaghu Raghuram氏は、「今回発表した製品は、データセンターにおけるハイパーバイザとその役割を根本的に再定義するものだ。VMwareは、ITの重要なニーズに応えるために引き続きSoftware-Defined Data Centerアークテクチャを発展させ、シンプルで効率的であると同時に、ビジネスの俊敏性と柔軟性を提供するインフラの実現をサポートする」としている。

なお価格については、VMware vCloud Suite 5.5のライセンスは、コア、vRAM、VM数の制限なしでプロセッサごとに提供され、1プロセッサあたりの市場想定価格は62万5,000円~。VMware vSphere with Operations Management 5.5は、Standard、Enterprise、Enterprise Plusの 3つのエディションで提供され、コア、vRAM、VM数の制限のない1プロセッサあたりの市場想定価格は21万8000円~。両製品とも2013年第3四半期より提供開始を予定している。