前回に続いて、4年ぶりにアップデートが行われたアップルのDAW「Logic Pro X」の新機能を紹介していこう。新バージョンで追加された目玉機能をまとめておくと、以下の通り。

  1. 仮想セッションプレイヤー …… "Drummer"
  2. ボーカルのピッチ修正からタイミングの微調整まで、意のままに …… "Flex Pitch"
  3. 複数のトラックを統合してコントロール …… "Track Stack"
  4. さらなる進化を遂げたMIDIエフェクト …… "Arpeggiator"
  5. 複数のプラグインパラメータを一度にコントロール …… "Smart Control"
  6. 新設計のビンテージキーボード・シンセサイザー群 …… "Retro Synth"
  7. 新登場の"Bass Amp Designer"と新しい"Pedalboard ストンプボックス"
  8. さらにパワフルになった"ミキサーセクション"
  9. 機能強化された"スコアエディタ"
  10. 生まれたての作品を世界へ …… "Sound Cloud"や"Final Cut Pro X"との連携
  11. 新しい"サウンドライブラリ"&"ループ"
  12. "Logic Remote" (無料・要iPad互換 iOS 6.0以降)
  13. スタジオのクオリティをステージで再現 …… "Main Stage 3"
Logic Pro X

今回はこの中から「Smart Control」「Retro Synth」「Bass Amp Designer」「Pedalboard ストンプボックス」そしてミキサーセクションとスコアエディタの機能を見ていこう。

複数のプラグインパラメータを一度にコントロール …… "Smart Control"

今まで、ソフトウェア音源の音像を自分が目指すものに近づける場合には、音色のパラメータを調整したり、ミキサー画面へ移動してリバーブなどAUX送りへの量を調整したりと、右往左往しながらのサウンドメイキングが常識であった。ところがこの"Smart Control"は画面を行き来することなく、一つのコントロール画面で、文字通り「スマート」に音作りができる優れものだ。

内蔵ソフトウェア音源のB-3オルガンの"Smart Control"画面

まずは画面を見てほしい。これは内蔵されているオルガンのソフトウェア音源の"Smart Control"画面だ。ドローバーによる倍音エディットの他に、画面右端の「Ambience」「Reverb」のエンコーダに注目してほしい。あくまでもこれは"一例"だが、前述の「ミキサー画面に飛んで云々」することなく、全てこのエディターでサウンドおよび音像をコントロールすることが可能なのだ(このパラメータを操作することで、ミキサーの該当するパラメータがリアルタイムで連動していく)。

また上級者向けには、この画面をダブルクリックすることによって、より細かい操作設定も可能となる。さらにこの"Smart Control"の割り当ては、自らの作業状況に応じて自由にカスタマイズが可能で、「カットオフ・フリーケンシーを絞りながら、レゾナンスを上げていく」など、例の動きも指先一つでコントロールできる。また選択した楽器・エフェクトに応じてどんどん姿を変えてゆくリアルなスキン(外装)も楽しい。こうした見た目などは、音楽制作のモチベーションを上げる要素として、非常に重要なポイントだろう。

ミキサーの「Bus1」「Bus2」ボタンをダブルクリックすると各Busに割り当てられたエフェクトプラグインの詳細なエディットが行える

新設計のビンテージキーボード・シンセサイザー群 …… "Retro Synth"

定評のあったLogic内蔵キーボード・シンセサイザー音源がさらにブラッシュ&パワーアップ。インターフェースが装いも新たに生まれ変わり、例えば画面の"Vintage B3 Organ"のエディット&コントロール画面では、クルクルと回るレズリーのアニメーションを横目に好みのマイクをチョイス、音源への距離なども細かくセッティングできるなど、よりレコーディングスタジオでの挙動に近いエディットが味わえる。

Vintage B3 Organ

また、1,500を超える新しいパッチも追加された"Retro Synth"の音源も直感的にコントロールでき、ビンテージシンセのウォームな鳴りを表現する"Analogモード"、80年代のメタリックな響きが特徴の"Analog Sync"モード、複雑なうねりと変化が楽しい"Wavetableモード"、そして80年代を代表するあのシンセを再現した"FMモード"の中から好みのモードを選ぶと…さまざまな「あの音色」が青春の想い出とともに、蘇える……鮮やかに。

"Wavetableモード"を選択するとあらわれるユーザーインターフェースは、ビンテージシンセサイザー「PPG Wave」を思わせるデザインとなっている