自動車のエレクトロニクス化は留まるところを知らず、ハイブリッド車(HEV)や電気自動車(EV)ではさらにその比率が増している。

また、そうしたエレクトロニクス化に併せてカーナビゲーションやリアエンタテインメントなど、車内で動画・映像を楽しむといった利用用途も広がりを見せている。しかし、その結果、各電子機器などをつなぐワイヤハーネスの量も増加し、重量やコストが増すといった問題を抱えるようになり、その解決策を自動車メーカーは求めるようになってきている。

そうした中で、半導体ベンダであるMaxim Integrated(日本法人はマキシム・ジャパン)が提案するのがシリアルケーブルによる代替だ。同社では、「自動車メーカーは現在、3つのC(Clean、Conscious、Connected)を求めており、我々はそれにマッチするソリューションを提供することに注力している」としており、中でも高速通信が可能なシリアルリンクソリューションに注目しているという。

その背景としては、車内のインフォテイメント用途の拡大は元より、欧米の法規制によるリアビューカメラの搭載義務付け、アラウンドビューモニタによる事故防止など、カメラに映った映像をリアルタイムで画像処理し、ドライバーなどにフィードバックする必要性が生じるようになってきたためだ。

現在、自動車に搭載が進められているのは第4世代高速シリアルソリューション「MAX9259」で、主に「ラグジュアリクラスのリアシートエンタテインメントやバックビューモニタ用途が中心」とするが、次世代自動車向けとして、そうしたハイエンドの自動車からノウハウがフィードバックが進められており、軽自動車などへも搭載されていく見込みだという。

マキシムの第4世代高速シリアルソリューションを用いた「ギガビットメディアシリアルリンク(GMSL)」のブロック図。制御チャネルなどが統合でき、高速伝送を実現しつつ、部品点数の削減も果たすことが可能

また、同社が2012年に提供を開始した第6世代高速シリアルソリューション「MAX9279/80」は、従来の線が太く、コストが嵩むツイストペア(STP)ケーブルではなく、より細く、柔軟かつ低コスト化が可能となる同軸ケーブルに対応したほか、HDCPへの対応や、クライアント機器への電源供給も可能にする「Power of Coax(PoC)」にも対応するなど、さまざまな部品の削減を実現しつつ、高速伝送も両立するソリューションとなっており、このSTPケーブルから同軸ケーブルに置き換えることで、配線コストは40%削減することが可能になると同社では説明する。

マキシムの高速シリアルソリューション。2012年には同軸ケーブルに対応した第6世代品のサンプル出荷がはじまった

さらに、クルーズコントロールや車線逸脱警告、自律走行、リアビューカメラ、自律駐車など、次世代機能で求められるリアルタイムで非圧縮画像の伝送に向けて、例えば第6世代品でカメラ処理専用ソリューションである「MAX9271/72」では、同軸もしくはSTPケーブルで最大1.5Gbpsの伝送速度を実現(720p@30fps)しており、シリアルからパラレルへの変換速度遅延も最大6.7μsと、ECU内部の処理時間の方がかかるほどに高速化されているという。

第6世代高速シリアルソリューションのカメラ向け製品「MAX9271/72」を用いたアプリケーション例。720p@30fpsの映像に対して最大1.5Gbpsの伝送速度を実現可能

ただし、現状、自動車に搭載されているアラウンドビューモニタやリアビューモニタなどはアナログRGBのシステムで実現されており、解像度は高くないものの、コストがこなれていることもあり、「デジタルへの切り替えには何らかのきっかけが必要」としており、リアシートエンタメやインパネを中心としたディスプレイソリューションなどの普及をばねに置き換えを促進したいとする。また、「地デジ(フルセグ)放送を車内でも楽しみたいというニーズや、カメラで写された画像の処理に対するフルHDへの要求も高まっている」とのことなので、将来の高速シリアルソリューションでは6Gbpsの伝送速度に対応が図られることが期待されるが、同社では単に通信部分だけを高速化するのではなく、「ソリューションとしての要求が自動車メーカーなどから高いことから、そうしたデータを処理するSoCを提供するパートナー企業との連携を強化する形で、そうしたニーズに対応を図っていきたい」としており、システム全体としての高速ソリューションの実現を目指していく方向性を示している。

1.5Gbps同軸ケーブルを用いたアラウンドビューモニタおよび固定カメラ向けデモマシン。カメラモジュールはHD CMOSイメージセンサ(1280×800画素)、0.8インチ立法サイズ。4~5つのカメラを利用可能。デモマシンでは、アラウンドビュー(4カメラ。フロント/リア/右サイド/左サイド)と固定カメラ(1カメラ)をスイッチの切り替えで制御することが可能。同軸ケーブルが利用可能なため、カメラ周りの配線はかなりすっきりさせることが可能