女性ファッション誌『AneCan』の専属モデルとして活躍中の押切もえが7日、小説『浅き夢見し』(発売中 1,260円 小学館刊)を発売し、小説家デビューを果たした。同書は、押切が約3年にわたって書き上げた初の長編小説。25歳の売れないモデル・村田瞳を主人公に、ネガティブな感情やさまざまな試練に押しつぶされそうになりながらも、「売れるモデル」へと成長していく姿を描いた。

押切もえ
1979年12月29日生まれ。千葉県出身。高校生の頃からティーン誌で読者モデルとして活動をはじめ、『CanCam』の専属モデルを経て、現在は2006年に創刊した姉妹誌『AneCan』の専属モデルを務めている。テレビ、ラジオ、コラム執筆など多方面で活躍するほか、『モデル失格』『心の言葉』など著書も多数出版している。
撮影:荒金大介(Sketch)

初版1万部でスタートし、売れ行き好調により8,000部の重版も決定。2009年の新書エッセイ『モデル失格』で記録した16万部超えに並ぶ、大ヒットが期待される。3年の月日をかけて紡ぎ出した押切もえ渾身の処女作。インタビューでは、その新ジャンルに挑んだきっかけ、執筆エピソードをはじめ、今年で13年目を迎える「モデル・押切もえ」の人生に迫った。

――あらためて、こうして実際に本になった感想をお聞かせください。

気恥ずかしいですね。照れます(笑)。やっぱり、自分の手から離れちゃったんだなぁという思いはありますね。もう、直せないんだなと。発売前なので(インタビューは発売前)、誰も読んでいない状態ですし、オーブンで温めているような状態なので、「おいしくできるのかな?」みたいな不安はあります。

――ということは、何度も手直ししてきたわけですね。

ギリギリまで最終の直しをしていましたね。ストーリーの流れは決めてからあまりぶれてはいないんですけど、やっぱり書くのに時間がかかってしまった分、文章に温度差があったりして。ある部分でいいところはあるんですけど、最後まで書いてみて最初に戻ってみると、なんてまどろっこしいこと言ってるんだって。結構、自分の未熟さを突っ込んだりしていて。最終日の夕方に出してって言われていたんですけど、夜中までやっていたので「いい加減にしてくれ」って言われました(笑)。

――それでは、一番満足できた部分は?

2カ所あって、最初の落ち込んでいるところは、過去の自分に近いなと思って面白く書けたと思うんですけど、あとは最後の方にライバルと大声で話す場面があるんですけど、普段の生活では自分の思いを叫んで伝えたりできないから、書きながらすっきりしていました。言ってやれ! みたいな(笑)。

――冒頭の部分となると、主人公の瞳がオーディションを受けて落ち込む場面ですね。

オーディションで落ちて、仕事もなくてこの先どうやって生きていけばいいんだろうって思っているところは、私が実際にオーディションとかに落ちて、モデルとして仕事がないときに思っていたことと同じなので、そこから物語がはじまってそのあとはフィクションにしていきました。だから、第1章は事実に基づいて書いているので、自分に近いですね。

――瞳と同じように周りのモデルに気を取られた経験はありますか?

思ってました思ってました。恥ずかしい…私だけブス…みたいな(笑)。かわいいなぁ、こんな人たちどこにいたんだろうって。あとは思い込みも強いですから、とにかくみんながすてきに見えるんです。そこの会場で見なかったら、そこまで思わないかもしれないんですけど、絶対に越えられない壁のように感じて。

――劇中の瞳は押切さんの分身のような存在になるのでしょうか。

書き出しに関しては、かなり分身です。そこから先はフィックションになるので私ではなくなるんですが。読む人にとっても、あまり私が出てきても嫌だろうなと思って(笑)。でも、こんなに嫌なことが起こったら私はこう思うかもしれないなとか、感情はかなり自分に近づけていると思います。

――小説の書き出し、最初の1行目は特に重要だと言われていますが、苦労されたりしましたか?

本になるとは思わずに、何気なく実体験を1ページ、2ページの文章で書いていったんですよね。自分がすごくつらかった時のことを書いていて、それを編集の人に見せたら「続き書いてよ」って。続きを書くと"私"になってしまうので、嘘の話を織り交ぜながら書きました。だから、自分のその悲しかった過去を書いたことが、今回の小説を書くきっかけになっていると思います。ただ、話が展開できなくて1年半くらい書かなかったんですけど…その間に社会的にも大きく変わりましたし。自分の人生観も変わりました。

――小説を書き上げるまでに3年かかったのはそういう背景があったんですね。

そうです。温めていたとは言いながらも、自分に技術がなくて放置していたということもあります(笑)。ストーリーの組み立て方は…行き当たりばったり。こんなところでこの人が出てきたらどうしようとか、こんな出会いがあったら嫌だなとか。ここで元カレが帰ってきたら嫌だなとか。主人公にいじわるするみたいな感じで書いたり、ご褒美をあげるつもりでいい言葉を書いたりしてました。

全体的にはサクセスはしてほしいなという話にはしてたんですけど、プロットとか粗筋立てて書いてしまうと説明になっちゃうし、登場人物のセリフもゴールに向かわせているような雰囲気がありありと出てしまいそうだったので、あまりそこは意識しないで、書いて違うなと思ったら削ったりして書いてました。……続きを読む。