大阪大学(阪大)は8月6日、細胞内部を清掃する仕組みである「オートファジー」により、損傷を受けた細胞内小器官リソソームが除去・修復されることを明らかにしたと発表した。

同成果は同大 大学院生命機能研究科/医学系研究科の吉森保 教授と前島郁子 CREST研究員、同医学系研究科の猪阪善隆 准教授らによるもの。詳細は欧州科学雑誌「The EMBO Journal」オンライン速報版に掲載された。

細胞の胃腸に当たる細胞内小器官リソソームは、生体内においてシリカや尿酸結晶などの結晶物、細菌毒素、脂質や薬剤などで損傷し、穴が開くことがこれまでの研究から報告されている。

穴が開くと内部の消化酵素や活性酸素が流出し、細胞にとって有害な存在となると言われてきたが、細胞がそれに対して、どのように対処しているのかについては、よく分かっていなかった。

研究グループは今回、このオートファジーが損傷リソソーム除去に働いているのではないかと考え研究を実施。その結果、損傷リソソームを細胞内の老廃物などを清掃するシステムであるオートファジーが感知し効率よく除去していることを発見したという。

具体的には、最初に損傷したリソソームがオートファジーの標的になるかを、培養哺乳類細胞を用いて検討。その結果、薬剤などで人為的にリソソームを損傷すると、損傷リソソームがオートファゴソームに包み込まれることを見いだしたという。

そこで短時間の薬剤処理により一時的に損傷リソソームを発生させたところ、通常の細胞では経時的に損傷リソソームが減少し正常なリソソーム数が増加したのに対し、オートファジー欠損細胞では損傷リソソームの減少はほとんど見られないこと、ならびにオートファジー欠損細胞では損傷リソソームが減少しないにも関わらず細胞全体のリソソーム数に変化がないことを確認。これらの結果から、損傷リソソームがオートファジーによって選択的に隔離されることで、新しいリソソームが形成されリソソームの機能が回復していることが明らかとなった。

オートファジーによるリソソームの品質管理。リソソームの膜が破れると、オートファゴソームがそれを隔離し、その後、正常なリソソームがそれに融合し、修復が行われる。その結果リソソーム数が減少し、新しいリソソームが作られる

次に損傷リソソーム除去の生理的な意義を検討するために、血中の尿酸値の上昇により起こる腎障害で、リソソームを損傷する尿酸結晶の形成を伴う急性高尿酸血性腎症に着目し、マウス個体を用いて解析を実施。

マウスに尿酸を投与し高尿酸血症を誘発させたところ、腎臓の細胞のリソソームが損傷し、オートファゴソームによって隔離されている様子が多数観察されたが、オートファジーに必須の遺伝子を腎臓細胞特異的に破壊したマウスではリソソームの損傷は見られたものの、損傷リソソーム周囲でのオートファゴソーム形成は認められないことが確認されたという。

オートファゴソームによって隔離される損傷リソソーム。尿酸投与した正常マウスの腎臓(尿細管)細胞内では、1重膜のリソソームが2重膜のオートファゴソームによって隔離されている様子が多数観察された(黄色矢頭:オートファゴソーム、アスタリスク:リソソーム、Mt:ミトコンドリア)

また、尿酸を投与した腎臓細胞特異的オートファジー遺伝子破壊マウスでは腎組織傷害の重篤化と腎機能の低下が見られたことから、研究グループでは、オートファジーは尿酸結晶により損傷したリソソームを隔離することで、高尿酸血性腎症の病態悪化を防ぐのに貢献していると考えられるという結論を得たとしている。

なお研究グループでは、今回の成果を受けて、尿酸は痛風の原因にもなるが、2型糖尿病を起こすヒトIAAPP、動脈硬化を起こすコレステロール結晶などもリソソームに穴をあけることが知られており、それらの生活習慣病の発症抑制にオートファジーが関与するという報告があり、損傷リソソーム除去による可能性があるとするほか、近年、これらの患者ではオートファジー能力が低下していることも報告されるようになってきており、今後の研究によりオートファジーを人為的に活性化することが可能になれば、生活習慣病の予防治療などにつながる可能性があると説明している。