Micron TechnologyのChief Executive Officer(CEO),DirectorであるMark Durcan氏

エルピーダメモリとMicron Technologyは7月31日、都内で会見を開き、Micronによるエルピーダの全株式の取得が完了したことに関する説明を行った。

冒頭、Micron TechnologyのChief Executive Officer(CEO),DirectorであるMark Durcan氏は、「エルピーダとMicronの統合により、世界一のメモリベンダに向けた道筋ができた。非常にワクワクしているとした」と、今回の統合の意義を強調した。

現在のメモリベンダ世界一はSamsung Electronicsだが、エルピーダがMicronに統合されることで、「2つの企業の相乗効果が見込めるようになる」とし、製造においても生産能力が45%向上し、Samsungと規模の面で競争ができる体制が整ったとする。また、Samsung以上に幅広いポートフォリオを有することにもなり、そのほとんどが重複しないこともあって、「基本的に強い分野がほとんど違うため、プラスアルファの面の方が強い。品質についてもエルピーダの技術力などを活用できるようになる」と、今回の統合が「業界最大のメモリポートフォリオ」を獲得することにつながることで、Samsungにはできない、その顧客にあった最適なソリューションを提供しやすくなるとした。

エルピーダの広島工場が新たにMicronのFab15に、RexchipがFab16に位置づけられることとなる

同日付でエルピーダの管財人兼代表取締役社長 CEOを退任した坂本幸雄氏。後任にはエルピーダの取締役COOなどを歴任してきた木下嘉隆氏が管財人兼代表取締役社長として就任。同氏はマイクロンジャパンの社長も務めることとなった

一方、これまでエルピーダを率いてきた坂本幸雄社長が続いて登壇。今回の統合について、「エルピーダはMicronに嫁にいく立場。顔が良いわけではないので、持参金をたくさん持っていかなければいけない。そのためには財務環境を健全なものにしないといけなかったが、今の時点では健全なものにできたと思う。(子会社である)Rexchip Electronicsの借入金なども大幅に低減できたほか、これまで広島工場での生産コストが高いと問題視されてきたが、現場の努力によって、Rexchipよりも安く作ることができるようになった」と事業の健全化にめどがついたことを強調。破産後の約1年半で、為替が円安に振れたことや、低コスト製造技術の進展に加え、スマートフォン向けDRAMビジネスが伸びを見せるなどの要因もあり、「エルピーダが大きく変わった。やっと結婚できる形が整ったと思う。これからはMicronと一緒になって世界一のDRAMソリューションカンパニーを目指すことになる」とした。

今回のエルピーダの株式取得により、Micronはサプライチェーン(SCM)の統合作業などを進めており、そうした内部的な課題がクリアになるまではエルピーダブランドのパッケージンなどを使用するが、遅くとも半年以内、できれば年末までSCMや販売チャネルの統合などを実現し、社名も「マイクロンメモリジャパン」に変更する計画としている。これによりエルピーダという名前そのものは消滅することとなるが、坂本氏は「少なくともエルピーダの火は消えない。Micronという名前に変わるが、開発部門やオペレーション部門などはそのまま残っていく。名前が変わっただけで、規模が大きくなるため、これまでできなかったこともできるようになる。米国と日本のエンジニアが一緒になって良い化学反応が起きることが期待できる」と、日本からDRAMの設計・製造そのものはなくならないとした。

事業統合に向けエルピーダが行ってきた各種の施策(左)と、Micronとエルピーダの持つ各種の強み(右)

なお、すでに両社のエンジニアが共同で20nm以降のプロセス開発なども進めているとのことで、両社が持つそれぞれの技術の特長などを組み合わせたメモリが将来的に生み出せるようになるという期待を示しており、顧客に真に価値のある最高のメモリソリューションを提供していくことで、単に規模を追い求めるのではなく、高い価値そのものを提供することで、Samsungに対抗できる最強のメモリカンパニーとして生まれ変わっていきたいとした。

左からMicron Technology Chief Executive Officer,DirectorのMark Durcan氏、同PresidentのMark Adams氏、エルピーダメモリの管財人である坂本幸雄氏と小林信明氏、新たにエルピーダメモリの管財人兼代表取締役社長に就任した木下嘉隆氏