岡山大学は7月23日、体内でのエネルギー貯蔵に極めて重要な物質であるクレアチンを、体内で作ることができず、発達の遅れやてんかん、自閉症などの症状が生じる「クレアチン合成障害」が発症した日本人患者を発見、治療を開始したことを発表した。

同報告は、岡山大学病院小児神経科の秋山倫之講師、小林勝弘講師、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科発達神経病態学分野の吉永治美准教授、神奈川県立こども医療センター神経内科の小坂仁医師、同センター臨床研究所の新保裕子研究員らによるもので、報告内脳の詳細は独Springer の臨床系国際雑誌「Journal of Inherited Metabolic Disease Reports」電子版に掲載された。

クレアチン合成障害をきたすグアニジノ酢酸メチルトランスフェラーゼ(GAMT)欠損症は、非常にまれな疾患で、これまで日本人で発症したという報告はない。クレアチンは肉や魚に多く含まれるが、食餌だけでは十分量のクレアチンを体に供給することができないため、健常人では自らの体内でクレアチンを新規に合成し、不足分を補っている。しかし、GAMT欠損症患者では、クレアチンの合成に必須なGAMTを生まれつき欠損しているため、体内でクレアチンを作ることができないことから、クレアチン欠乏の症状として、精神運動発達の遅れやてんかん発作、自閉症などが現れ、未治療のままだとほぼ全員が重度の知的障害をきたすことが知られている。

しかし、GAMT欠損症の症状には特徴が少ないため、早期診断が難しく、発症前診断は困難とされているほか、通常の薬が効かないことが知られている。ただし、有効な治療法も報告されており、今回、研究グループでは、日本人患者の確定診断を国内で初めて行い、クレアチン合成障害が発症していることを確認。治療を開始したところ、治療開始後3日で、長年苦しんできたてんかん発作が完全になくなり、治療開始2カ月を経ても発作の再発が確認されないことから、従来服用していた抗てんかん薬の量を減らし始め、観察を継続しているとしている。

なお、研究グループでは、発症前診断のためには、GAMT欠損症を新生児マススクリーニング事業の対象疾患とするのが理想的だが、その実現のためには、患者が日本国内にある程度存在することをまず示さなければならないとしており、今回の発見が日本人の中にもGAMT欠損症が存在することを示すものであり、今回の治療効果を慎重に評価していくことで、発症前診断・治療の体制の構築につなげることで、将来的な発達の遅れやてんかん発症の予防が期待できるようになるとコメントしている。

左は体内でのクレアチン合成のイメージ。GAMTが欠損すると、体内でクレアチンが作れなくなる。右は核磁気共鳴スペクトロスコピー検査でGAMT欠損症患者の脳内クレアチン量を測定した結果。本来あるべきクレアチンが検出されていないことが分かる