東北大学は、明昌機工、素形材センターと共同で、レーザ照射による急速・局所加熱方法を採用した熱インプリント(転写)装置を開発したと発表した。これにより、短時間かつ安価に大面積ナノパターンが大量創製できる技術を確立したという。

同成果は、明昌機工、素形材センターの西山信行 特別研究員、東北大学 金属材料研究所 の加藤秀実 准教授らによるもの。

ナノインプリント法は露光技術に比べ製造装置が簡便で、製造時間も短縮できる可能性があるため、次世代エレクトロニクスを実現するうえでの重要技術の1つとして挙げられている。しかし、インプリント法は露光法に比べて、パターンの加工精度や寸法均一性、パターンに熱応力や機械的応力が加わるなどの課題があり、その解決のために波長が短い紫外線照射と紫外線硬化樹脂を組み合わせることでパターン精度の向上が図られてきたが、次世代超高密度磁気記録媒体として期待されるビットパターンドメディア用途では、10nmピッチ程度のナノパターンを実現することが求められており、より微細なパターンを大面積で効率良く製造できる技術が求められていた。

そこで今回、研究グループでは、Nd-YAGレーザ(λ=1065nm)を加熱源として用いたナノインプリント装置を開発し、長さ70mmに成形したバー状レーザを約40秒、あらかじめ金型に押しつけた厚さ約20nmのPd-Cu-Ni-P系金属ガラス薄膜付きガラス基板に走査照射することで、直径2.5インチ(約75mm)磁気記録媒体基板上に、形状のそろった直径25nm、ピッチ46nmのホールが規則正しい配列で転写成形できることを確認した。

今回開発されたナノインプリント装置

強化ガラス製HDDを基板上のPd-Cu-Ni-P系金属ガラス薄膜(厚さ約20nm)に転写したナノパターンの外観

強化ガラス製ハードディスク基板上のPd-Cu-Ni-P系金属ガラス薄膜(厚さ約20nm)に転写したナノパターンを拡大走査電子顕微鏡像で撮像したもの

一般的に市販されている多くのナノインプリント装置は、加熱源に熱容量の大きな抵抗加熱式ヒータを用いるため、約30分のプロセス時間を必要としていた。しかし、今回開発された技術では、薄膜を局所加熱することで従来の抵抗加熱式ヒータ比で約1/20以下となる0.03kWh/枚の省エネ化と、同比1/15の約40秒での転写プロセス完了が可能となったほか、熱インプリントで問題となる金型と被転写素材の熱膨張の差によって生じるパターン崩れも回避することが可能となったという。

また、今回の実験では、熱可塑性を有する金属ガラス薄膜が用いられたが、同技術は他の熱可塑性を有する素材、例えばポリマーあるいは酸化物ガラスなどへも転用が可能であると考えられると研究グループでは説明しており、今後は、転写金型と被転写媒体の位置を厳密に制御するアライメント機構、自動搬送機構、転写金型の自動離型機構といった同プロセスの周辺技術の確立を進め、それらを統合することで量産装置を開発する方針とするほか、超高密度磁気記録媒体以外の先端医療、環境適応触媒などへの適用に向けた探索も行っていく予定としている。