――それだけの実感があれば、完成した作品を見てかなり満足されているのでは?

「もちろんこれが100点満点…というわけじゃありませんが、自分なりの手ごたえみたいなものは感じています。何て言ったらいいんでしょうか…自分の出演作なのに、初めて自分じゃないように見えたんですよ。これは私にとってとても不思議で、意義のある体験です。"私がやりたかった仕事って、これなんだ!"って思えて。当り前のことなんですけど、映画ってたくさんの人に見ていただけるじゃないですか。今までは、自分が参加したものがひとつの形になるだけで満足していた部分もあったけど、今回は、皆さんに"見ていただける"ことがこんなにうれしい事なんだなってあらためて感じています」

――これからの仕事にもいい影響を与える作品になったということですね?

秋月「それは実感しています。しかも海外の映画祭にも出品されているので、本当に夢のようです。女優という仕事に対する情熱も増しましたし、漠然としていた自分のやりたいことが少し明確になった気もします。ものすごく率直に言えば、私は人を感動させる女優になりたいんです。求められていることにしっかり応えつつ、いつも、求められていることよりも少しだけ"以上"なことをやっていきたいなって。そのうえで、一番大切なのは、作品の持つテーマをちゃんと伝えられるお芝居をする…ということじゃないかと感じています。いろんなジャンルの作品に出演させていただいていますが、それぞれの作品に伝えるべきメッセージはあるはずですから」

帰る場所がないサヤコは街を歩きつづける

――では、『風切羽』で伝えたいメッセージとはどんなものでしょうか?

「小澤監督は実際にサヤコのような境遇の方と出会い、この作品の企画を立てたそうです。私自身この作品に参加したことで、虐待を受けている、もしくは体験したことがある人って、すぐ隣にもいるのかもしれないと思えるようになりました。映画をご覧になった方には、そういうちょっとした"気づき"だけでも感じていただければと思います。私自身、深いテーマから多くのことを学ばせていただいた映画であり、女優として進むべき道を考えさせられる作品になりました」映画『風切羽』は、6月22日(土)より、池袋シネマ・ロサ2ほか全国公開。