JR西日本は19日の6月定例社長会見で、奈良線の複線化事業について合意のめどが立ったことを発表した。これに合わせて、京都駅奈良線ホームや六地蔵駅の改良、棚倉駅の1線スルー化なども発表されている。

奈良線は京都~奈良間の快速・普通列車のほか、途中の宇治駅・城陽駅で折り返す運用も多い(写真はイメージ)

JR奈良線の1日平均の利用者数は、1990年度の約2万人から着実に伸び、2010年度に5万人を突破。快速運転の開始や新駅開業、部分複線化などの輸送改善施策により、JR発足当初と比べて利用者数は約3倍になっているという。その一方で、いまだ単線区間が多いため、ひとたび輸送障害が発生すると、ダイヤの回復に時間がかかる。踏切の多さやホームの混雑といった安全面の課題も残っている。

京都府および関係市町とJR西日本はこのほど、第1期高速化・複線化事業(京都~JR藤森間・宇治~新田間、2001年3月完成)に続く第2期事業に関しておおむね合意。地元自治体の協力の下、複線化事業が進められることになった。今回、複線化されるのは、JR藤森~宇治間と新田~城陽間、山城多賀~玉水間。これにより、奈良線全線(34.7km)の64%にあたる計22.2kmが複線化され、京都~城陽間はすべて複線となる。

奈良線の1日平均の利用者は、この20年間で3万人以上増えた

今回の複線化事業により、京都~城陽間はすべて複線区間となる

これに合わせて、混雑緩和や安全性向上などを目的に、京都駅8・9番ホーム(JR奈良線ホーム)の拡幅と橋上駅舎への連絡通路の増設、六地蔵駅のホームの移設・拡幅も計画されている。棚倉駅では駅構内が改良され、1線スルー化される。踏切の安全対策も考慮され、新たに「3次元レーザーレーダー式障害物検知装置」を約10カ所で導入するほか、通過列車と停車列車を区別し、踏切警報時間を制御する「賢い踏切」(通称)の導入も検討されるという。

これらの事業はJR西日本が事業主体となって進められる予定で、事業費は369億円。事業期間は協定の締結からおおむね10年間とされ、2022年度の開業を目標としている。