ということで

新たな方向に舵を切ったRAMBUSの内容をかいつまんでお届けしたが、強く感じたのは会社の方向性が大きく変わったことと、それでも「RAMBUSはやっぱりRAMBUSのままだった」という強いインパクトだった。会社の方向性について言えば、たとえば2010年にはこんなビデオを公開したりしており、当時のRAMBUSの方向性を考えるとある意味ちょっと意外な感じはしたのだが、Photo03とかPhoto04を見るとその感がいっそう強まる。

RAMBUSという会社は、よく言えば技術至上主義、悪く言えば独善とも取れる振る舞いをする会社であり、ただそれはまったく従来とは異なる発想と、それを支える高い技術力と表裏一体の関係にあるという感じを常に受ける会社だった。ところが今回のPress Conferenceでは、高い技術力に対する自負こそ以前と変わらないと感じたものの、独善とも思える雰囲気が姿を消しており、まるで普通の会社のように感じたことを正直に記しておきたいと思う。だからこそ「普通の会社」から、Binary Pixelの様なまったく新しい発想に基づくTechnologyが出てきたことに筆者は非常にびっくりしたし、そしてそうした面でRAMBUSが依然としてRAMBUSであり続ける事にある意味安堵した。

もちろん従来のビジネスは引き続き行なわれているし、相変わらず係争中の訴訟も多い。ただ、たとえば2013年5月における裁判所の裁定を受けて、6月9日にはSK Hynixとライセンス契約を締結して訴訟を終結している。四半期ごとに1200万ドルを5年間(合計で28.8億ドル)という金額は、たとえば同社がSamsung Electronics相手に2010年に締結したライセンス契約の半分未満(Samsungは合計62億ドル)である。SK Hynixの売り上げ(2011年末だとおおよそ93億ドル)から考えるとそう多くない(5年で28.8億ドルだから、年間だと5.8億ドルほど)金額であるが、これは訴訟費用を抑えるという同社の方針転換を受けてのことかもしれない。

前CEOのHughes氏の時は、業界全体を敵に廻してもきっちりと取り立てる方向性だったが、これによるビジネスの行き詰まりが明確になった以上、この方向性に固執する必要性が薄れたのだろう。実際XDR2に関しては、端から見ているとXDR2のテクノロジーそのものに問題があるのではなく、RAMBUSと取引することのデメリットを多くのベンダの担当者が暗に示唆していた。「我々は業界標準メモリを使う」と多くのベンダは語っていたが、HMCなんぞはそうしたベンダが自分たちで「これこそ業界標準」と言ってるようなもので、要するに業界標準という言葉には実はそれほど意味はない。

個人的に見れば、技術的難易度はHMCの方がはるかに高い(まだ3D Stackingの低価格での量産方法が確立されていないし、HMCとHostを繋ぐ部分の高速I/Fが低消費電力で本当に実現できるか、やや疑問に思っている)から、XDR2の方がある意味筋は良いと思うのだが、そういう部分を加味してもRAMBUSを使うことのデメリットの方が大きかった、というのだからこれは相当なものだ。

そんなわけで、核となるInovative Technologyはそのまま維持しつつ方向転換を図りつつあるRAMBUSの動向は引き続きウォッチしてゆきたいと思っている。