「インフルエンサー」とは? 日頃の業務で何気なく使っている専門用語。でもその言葉の意味、ちゃんと理解して使っていますか?

ソーシャルメディアマーケティングラボが、なんとなく分かっているつもりでも、実はよくわからなくて「もやもや」 している?!今さら人に聞くのはちょっと恥ずかしい、ウェブマーケティング用語を分かりやすく解説します。

 用語説明:【インフルエンサー(Influencer)】

影響、感化、効果を意味する「Influence」を語源とし、世間に大きな影響力をもつ人や事物を表す。 特に、インターネットの消費者発信型メディア(CGM)において、他の消費者の購買意思決定に影響を与えるキーパーソンを指す。具体的には、好感度の高いタレントやファッションモデル、スポーツ選手や、特定分野に詳しい専門家や知識人、インターネット上で強い影響力を持つ個人ブロガーなどが挙げられるが、 マーケティング会社のブルーカレント・ジャパンでは、「コミュニケーション力」「信頼獲得力」「情報伝播力」をすべて備えた消費者と定義している。

2002年に出版されたマルコム・グラッドウェルの『The Tipping Point(邦題:「急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則」)』によって、商品やブランドがターゲットとするコミュニティやセグメント内において、周囲に影響を与える人物を見つけ、彼らに対して一次的にアプローチする「インフルエンサー・マーケティング」が注目されるようになった。

解説

情報取得効率化にフィルタリング効果を与えるマイクロインフルエンサーの登場

企業のマーケティングメッセージがあふれる現在、消費者は企業側からの広告メッセージよりも、同じ消費者としての立場から発信された体験談や評価などのクチコミを重視して、商品の価値を見極める傾向が強くなっています。ここ数年急激に発達してきたブログメディア、動画サイト、SNSなどのCGM(Consumer Generated Media: 消費者生成メディア)によって、多くの消費者がクチコミの情報検索を簡単に行うことができるようになり、メディア接触意向が変化し、情報流通においてクチコミの起点や“増幅器”となるインフルエンサーの存在感が大きくなりました。

しかし、企業側は「より影響力のある人に話題にしてもらいたい」という志向によって、特定のインフルエンサーに案件依頼が集中することが増え、ブロガーやアフィリエイターなどを使ったオススメ商品情報が、企業の“下心が見える”と反発を受ける場合も増えてきました。さらに、消費者と対等な立場を装ったブロガーに報酬を与え、商品やサービスの評判を高める情報を書かせる「やらせ」ブログなど、いわゆるステルス・マーケティングに発展することも増えています。

さらに、ソーシャルメディアによって活発になった情報共有は情報量の劇的な増加をもたらし、ネット上に玉石混合の情報コンテンツが溢れるようになったため、従来インフルエンサーとされた有名人や専門家、著名人などの発言は、マスメディア的な認知レベルでの情報発信に域を超えて意思決定や購買行動まで影響を及ぼすことが減り、ユーザーは情報価値の判断に迷うことが増えてきました。そこで、自分が必要とする情報取得の効率化を求めたユーザーは、TwitterやFacebookなどで繋がった身近な人とのコミュニケーションの中で、自分の感性や価値観に合った、またライフスタイルに近いインフルエンサーを見つけるようになりました。

ソーシャルスコアだけによる影響力判定の危険性

こうした嗜好性の近い小さな圏域で他者に影響をもたらすマイクロインフルエンサーのほうが、心情的な繋がりをもとにした共感力、伝搬力が高い傾向があることがわかってきています。今まではインフルエンサーによる情報拡散範囲は想定できても、影響力の大きさは把握できませんでしたが、FacebookやLinkedIn、Google+のような現実の人間関係を色濃く反映したSNSでの関係性を数値化する「ソーシャルスコアリング」の登場で、マイクロインフルエンサーの存在を特定することが可能になりました。

米国では今、ソーシャルスコアを活用したマーケティング施策が人気となっており、最近では航空会社キャセイ・パシフィックが「Kloutの高いユーザーに限定して、航空券を無料で提供したりVIPラウンジを無料で使わせる」という施策を行ったことが話題となりましたが、高いスコアをもつインフルエンサーだけが高待遇を受け、そうでない利用者のロイヤルティを下げてしまう”ソーシャルメディア・カースト”というシステムに繋がるのではという声も上がっています。

ソーシャルスコアには感情などに関する分析が含まれておらず、ネガティブな内容であっても発言量の多いユーザーが高く評価されたり、Facebookでの交流は少ないのに投稿したYoutube動画が偶然バイラルヒットしただけで数値が高くなるいったように、ソーシャルスコアだけで影響力を判断することはまだまだ難しいと言えます。

マイクロインフルエンサーの選定と情報発信意欲の喚起

マイクロインフルエンサーによる影響は身近なコミュニケーションの範囲での限定的なものであり、一回で大きな効果を産み出すものではありません。顧客と商品(または商品に関する情報)の接触回数が3回を超えると顧客が商品の存在を認知し、7回で商品を手にとり購買を検討するという「セブンヒッツ理論」を参考にすれば、商品の評判を良くしたり、購入の機会を増やす取り組みとして、ターゲットとなる消費者に様々な角度から影響を与えることが出来るマイクロインフルエンサーと、継続的かつ多角的にコンタクトして対話をし、そのネットワークに自社の情報を拡散するという事はこれからとても重要になってきます。

そのためにはマイクロインフルエンサーの中から”どの人物を選ぶのか”、”なぜその人物を選ぶのか”が大切であり、あくまで「自社にとってのインフルエンサーであるか」で判断するべきです。影響力の少ない人でも話す価値のある人がいれば積極的に対話をしていく姿勢が必要ですし、影響力のある人にだけ媚びるような姿勢が他のユーザーに見透かされれば、「この企業はフォロワー数で判断する」というネガティブなイメージを与えてしまうため、バランス感覚が重要となってきます。

また、マイクロインフルエンサーは個人の趣味・趣向によって情報発信の意欲が大きく左右されるため、特定企業が商品の魅力を継続的に発信してもらうことはなかなか難しく、結果として効果も限定的なものになりがちです。そのため単なる商品訴求ではなく、その周縁の“興味・関心テーマ”に拡大する手法を考える必要があります。趣味性やライフスタイルなどの世界観を提示することでより強い情報発信意欲を喚起し、マイクロインフルエンサーがフォロワーを巻き込みやすい環境を創ることが出来るでしょう。

イラスト

速瀬 みさき

1993年よりホラー誌デビュー。漫画家として活動しながらエッセイ、イラスト、デザインなども手掛ける。近著コミックスは、メイド喫茶にバイトで潜入取材漫画。広告代理店勤務の夫を持ちながらも、マーケティングなにそれ?状態で執筆中!

公式サイト : http://www.nanacom.com/
Facebookページ : http://www.facebook.com/hayase.mi
用語解説:ソーシャルメディアマーケティングラボ

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