岡山大学は5月23日、岡山県真庭市 蒜山産のヤマブドウ果汁の部分精製濃縮ジュースの飲用でマウスの皮膚がんの発症を抑制することを見出したと発表した。

成果は、岡山大大学院 医歯薬学総合研究科 医薬品安全性学の有元佐賀恵 准教授らの研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、3月31日付けで英国学術誌「Nutrition and Cancer」に掲載された。

今回、有元准教授らがヤマブドウを選んだ理由は、短期試験の抗変異原性試験で、ヤマブドウ果汁が、比較したブドウなどの果汁より強い抑制活性を示したことにある(画像1)。

画像1。果汁の抗変異原性比較。グラフがより下にあるほど、抗変異原性遺伝子損傷性が高い。同じ産地の比較でブドウよりもヤマブドウの方が活性が強く、発酵させたワインよりも元の果汁の方が強いことが判明した

今回の研究では、マウス28匹にがん誘発物質と発がん促進物質を塗布する実験を実施。半数の14匹にはヤマブドウ果汁を部分精製して糖分などを除いた濃縮ジュースを飲用させ、20週間にわたって経過が観察された。

その結果、水道水を飲用させた群では11週までに全匹に皮膚がんが発生。しかし、ヤマブドウジュースを飲用させた群では、20週経っても9匹に皮膚がんが発生せず、有意に抑制効果が見られた形だ(画像2)。また、飲用させる代わりにヤマブドウ果汁(無処理)を外用塗布した場合でも、塗布しなかったマウス群と比べて、有意に皮膚発がんが抑制されることが確認された。

画像2。がん誘発物質と発がん促進物質を塗布する実験の結果。水道水飲用群は全匹皮膚がんを発症し、ヤマブドウジュース飲用群ではがん発症が遅いか、まったく発がんしないマウスも多かった

そこで有元准教授らは発がん抑制機構を調べるため、慢性的な炎症から発がんへ進展する点に着目。マウス20匹の耳に炎症を引き起こす物質「ホルボールエステル」を塗布する実験で、ヤマブドウ果汁の濃縮ジュースを飲用させたマウス12匹は耳の炎症による腫れが軽く、水道水を飲ませた群と比べて有意に炎症が抑制されているのが確認された。

さらに炎症を起こした耳の組織の、発がんや炎症の進展に関与する「シクロオキシゲナーゼ2酵素(COX-2)」の活性を調べたところ、ヤマブドウ果汁の濃縮ジュースを飲用させたマウス群では、COX-2活性が有意に低く、COX-2の選択的抑制が抗炎症、ひいては後発がん効果に関与していることが考えられたという。

ヤマブドウ果汁の有効成分の単離研究も行われ、その結果、ポリフェノールの1種である「カフタル酸」が単離同定された。カフタル酸に抗炎症作用があることも確認された。

有元准教授らは、これらの結果から、蒜山産のヤマブドウ果実はすでにジュースやワイン、ジャム、ソースなどとして販売されているが、同県産の機能性食品としての発展が期待されるとしている。