米Square, Inc.とその子会社であるSquare、および三井住友カードは5月23日、都内で記者会見を開き、スマートフォンやタブレット端末を利用したモバイルクレジットカード決裁サービス「Square」の日本展開を発表した。

米Squareは、2009年にTwitterの共同創業者として知られるジャック・ドーシー氏が設立。決裁だけではなく、POSシステムとしてもシンプルな操作性と高い利便性を実現するSquareは、現在、米国とカナダでサービスを提供。米国では事業開始から約3年で加盟店数300万を達成し、年換算の取扱高は150億ドルに達する。日本でのサービス提供は、北米地域以外では初の市場参入となる。

Squareは、スマートフォンやタブレット端末に取り付ける小型のクレジットカードリーダーを利用し、金銭の受け渡し決裁を行うことができるサービス。店舗据え置きのカードリーダーが不要な点や、最短で翌日に受け手の口座に資金が振り込まれるといった手軽さや便利さが受け利用が拡大している。Squareのリーダーは無料で入手でき、米国では決裁あたりの手数料は2.75%。

今回の日本展開では、クレジット会社パートナーは三井住友カード。手数料は3.25%で、決済資金は指定銀行の場合には翌営業日に、その他の銀行口座でも1週間以内に振り込まれるという。

三井住友カード 代表取締役 兼 最高執行役員 島田秀夫氏

三井住友カードは、米Squareに対して米国以外の事業者として唯一となる出資を行い、2012年9月に資本提携を結んでいる。出資額は1000万ドル。

三井住友カード 代表取締役 兼 最高執行役員 島田秀夫氏は、「単に、アクワイアラーとしてだけではなく、(米Squareの)戦略的パートナーとして同社との事業展開を進めていく」と述べ、まずは、日本国内においてクレジットカード決済が十分に浸透していなかった個人事業主や中小企業のスモールビジネスのマーケットを拡大させていくと抱負を語った。

島田氏は、戦略提携にいたった背景を「Squareサービスに先進性があることはもちろんとして、スマートフォンをリーダとして利用し、店舗での導入をしやくすすることで、クレジット決裁が今後拡大していくと考えており、SMBを中心に、当社のプレゼンスを高めること」「(Square Walleのような)先進的で利便性の高いサービスを導入することで、加盟店や利用者のサービス向上を図れる」と説明する。

両社では、それぞれの強みやノウハウを活かして、加盟店や利用者の視点にたったシンプルで便利なクレジットカード決済サービスの提供を進めていくとしている。米国でサービス展開しているSquare Walletについては、今回、日本での提供開始とはならなかったが、このような先進的なサービスの日本への早期導入を進めるとともに、サービスの共同開発などにも取り組むという。

米Square CEO ジャック・ドーシー氏

米Square CEOのジャック・ドーシー氏は、日本展開の理由を「日本を選んだ基準は、経済力や市場規模、その強さや成熟度などから判断した。日本のビジネスの99%はSMBで、起業家精神にもあふれている。企業の成長に合わせてサービスを利用してもらえると考えており、決裁だけではなくPOSシステムとしての分析機能も活用してもらえるだろう」と述べ、「(日本は)成功するには難しい市場だが、もちろん成功するつもりだ。そして、ここで成功すれば他の市場進出についても大きな達成となる」と語った。

このようなモバイル決済では、同じく米企業のPayPalがソフトバンクテクノロジーと手を組み、2012年よりPayPal Hereの日本展開を行なっている。競合とも言えるサービスに対してドーシー氏は、「我々のサービスは決裁だけではない。商取引におけるPOSレジなど経営管理機能というソフト面での優位がある。POSレジを実現し、シンプルで手頃に解決できるこのサービスは、北米で拡大しており他の市場でも受け入れられると考えている」とした上で、「なによりも大事なのは、"一番乗り"になることではなく、"一番いいものを提供する"ことだ」と自信を見せた。

モバイル端末では、QRコードを用いて決済を行うznapが6月にも国内展開を開始する予定となっている。米国では、日常の決済手段としてクレジットカードの利用が広がっておりSquareの成功につながっているが、日本ではクレジットカードの決済はまだまだ多くない。しかし、特に中小の小売業などこれまでクレジットカード決済に消極的だった企業が、このようなサービスが手軽に導入できるようになったことで、資金決済のスタンダードが変わる可能性もある。