女優の優香が7年ぶりに主演を務める映画『体脂肪計タニタの社員食堂』が5月25日にいよいよ公開を迎える。累計532万部を突破した同名レシピ本をもとに、李闘士男監督が映画化。優香演じる栄養士・春野菜々子のサポートのもと、肥満体型のタニタ社員が、新型体脂肪計発表会に向けてダイエットプロジェクトに挑む奮闘劇を描いている。

豪腕社長・谷田卯之助(草刈正雄)の健康状態が悪化したことから、二代目副社長・幸之助が会社を任されることになる。二代目であることに甘えてきた幸之助は、父には叱られてばかりで、卯之助が不在の社内では部下からも説教をされる始末。そんな何ひとつ成し遂げたことがない男を、在日ファンクのボーカルなどでも知られる浜野謙太が演じた。近年、音楽の枠を越え、個性派俳優としての地位を確立しつつ浜野。インタビューから、幸之助との意外な共通点が見えてきた。

浜野謙太
1981年生まれ。神奈川県出身。インストゥルメンタルバンド・SAKEROCKのトロンボーンを担当するほか、自身がボーカル兼ギターを務めるバンド・在日ファンクなどで活躍。近年は俳優としても活躍しており、ドラマ『モテキ』(2010年)、ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞した映画『婚前特急』(2011年)などで注目を集めた。

――映画をご覧になっていかがでしたか?

2回見ました。1回目は気が気じゃないというか。僕がやっているところで思ったほど人が笑わないんだなと(笑)。ここで爆笑で、あとはあそこで爆笑で…みたいに考えてたんですが、映画を見て分かったのは監督は実はそういう使い方をしてないというか。幸之助は爆笑させてくれるキャラクターじゃないんですよね。でも、どこかにくめないし、それでいてちょっとイラッとするというか。だからこそ2回目を見た時に、僕が直談判するシーンでシクシク泣いている人がいたので、そっちに重心が置かれていた役柄だったんだなと思いました。

――確かにそのシーンはウルッきました。その直前のダッシュのシーンもすごかったですよね。

ありがとうございます。でも、めっちゃ平凡ですよね(笑)。良い人たちに囲まれているのに何もできない男が、よし! やろう! と決意して言っただけですからね。でも、それは割りと大事なことと言うか。大したことないんですけど、そこって現代人にとって重要なポイントだと思います。みんなが戦争をくぐり抜けてきたわけじゃないし、大変な思いをしている人ってそんなにいないというか、大体がリア充というか。そんな中だからこそ、幸之助の気持ちがわからないわけがない。だからこそ、しっかり繊細にやらないとと思ってました。

――ということは、今まで浜野さんが演じてきた役柄の中ではちょっと特殊ですかね。

そうですね。だいたいぶっ飛んだ役とかが多いので(笑)。でも、うれしいことに全部やる役やる役、情けない役ですけど(笑)。幸之助は特に平凡で、僕に近かったですね。ストーリーに大きく関わる準主役だったので、自分の沽券に関わるというか、この平凡な役を目いっぱい演じてやろう! 目立たせてやろう! 共感させてやろう! と思いました。

――監督は浜野さんを役者としてではなく、良い部分を引き出すことを意識していたそうです。そんな監督の目からは、浜野さんは撮影が進むにつれて、演じる喜びを感じていたようだと。

そうですね、どんどん楽しくなっていきましたね。確かに監督は僕に対して、あたかもバンドメンバーのようにフランクに接してくれました。それはおっしゃるとおり、良い部分を抽出しよう、楽しませようという考えがあったみたいです。

――周囲には厳しいのに、自分だけ優しかったら気まずくないですか?

いやいや! 僕はそれを見て優越感に浸ってたので(笑)。俺だけ優秀なのかな~みたいな。でも、それは監督が気を使ってくださって、わざとやっていたことだったんですよね。

――先ほど、谷田幸之助と自分が似ているとおっしゃってましたが、具体的にどのような部分が共通しているのでしょうか。

やっぱり、平凡ということでしょうかね。2代目で満たされていますし、親もしっかりしていて。会社を継げばいいわけですし、周りにも悪い人がいないんですよね。何の不自由もありません。僕も標準的な家庭というか、親はちゃんと稼いでいたし、食べ物で苦労したこともありませんし。大学まで行かせてもらいましたし、結婚資金もちょっとだけ援助してもらいました。そういう中で、果たしてお前にドラマがあるのかと言われると(笑)。

――しかし、幸之助も「継がなきゃいけない」という苦しみもあったと思います。社長の父からは厳しく育てられたようですが、あの父と子の関係で重なる部分はありますか?

団塊の世代の親を持つ人たちは、みんな感じることなんじゃないかと僕は解釈しました。親世代はしっかり独り立ちしてきたというか。20代前半には家庭を持って、子どもを産んで、マイホームを買って。でも、時代は変わって、今、僕たちは「お前はしっかり考えを固めてるのか!」と言われても、固まっているような固まっていないような…みたいな(笑)。そんな中、それでも大事なこと、根本的なことが描かれているのがこの映画の準主役、幸之助のテーマだと思います。僕も周りにいい人しかいないし(笑)。……続きを読む。