OpenCLとCUDAの比較デモ

またAMDはGPGPUに関してOpenCLの利用を積極的に進めているが、この分野ではNVIDIAのCUDAが先行しているのは周知の事実である。これに対する反撃のひとつとして、次世代のPremire ProなどがOpenCLを利用するようになり、これにより処理が高速化されるというデモを紹介(Photo20)、対Quadroだけでなく、対CPUという観点でもFireProが有効なソリューションであることを示した(Photo21,22)。

Photo20:このPreviewはこちらから動画で参照できる。従来からAdobeはOpenCL/CUDAを一部製品で利用可能にしていたが、ここからもう一歩踏み出した形

Photo21:横軸が、一番左と残り2つでは異なるので注意

Photo22:まぁソフトウェアと比較すれば当然高速なのは理解できる。ちなみにこれらは、実際にPreview版のPremire Proを使っての動作デモも行なわれた

発表会が行われた背景

さて、あらためて「なぜこんな発表会を行なったか」であるが、実際問題としてこのProfessional Graphicsの分野ではNVIDIAのQuadroのシェアが大きい。ただ性能価格比と絶対性能の両面でAMDはQuadroを上回っており、なので「この通り良い製品なので、もっとFireProを買ってください」というのが氏のメッセージである(Photo23~25)。

Photo23:何気にW9000の数字が混じっているのはちょっと反則だと思う

Photo24:これは同一の処理を行なう場合のCPU占有率を比較したものだが、ただNVIDIAは一般にOpenCLへの最適化が進んでいないことは念頭においておくべきだと思う

Photo25:こちらも同様

もっともこのマーケットの場合、まず絶対的なマーケットシェアが小さく、さらにいえばまず求められるのは安定性とか確実な動作保証で、ついで性能とかコストになる。

ユーザーも、自分で「Quadroを選ぶか、それともFireProにしようか」なんて選択するケースはむしろレアで、どちらかといえばメーカーあるいはインテグレーターに「こういう業務向けにこのソフトを使いたいので、それに対応できるハードウェアを用意してくれ」とオーダーを掛け、そこでメーカーやインテグレータがカードを選ぶ形が圧倒的に多い。

当然こうしたケースでは、絶対性能とかコストパフォーマンスよりも「これまでちゃんと動いていた」という実績が重視されるから、必然的に初期にシェアをとったQuadroが引き続き高いシェアを握ることになるわけで、これはこれで当然の選択である。

AMDはこの点でやや遅れをとっており、これを何とかして覆したい、という意識の現れがこの発表会だった、と考えれば良いのだと思う。PC向けとはまた違うビジネスの一端を垣間見ることの出来る機会であった。