車載機のカーナビで長い歴史を持つアイシン・エィ・ダブリュが、手がけるスマートフォン向けカーナビアプリ「NAVIelite」は、同社の新しい取り組みとして位置づけられている。今回は、その狙いと今後の取り組みについて、VIT事業本部営業部副部長の廣瀬功司氏とVIT事業本部製品統括部第2統括グループ水野智仁氏に話を聞いてみた。

カーナビのノウハウをつぎ込んだナビアプリ

VIT事業本部営業部副部長の廣瀬功司氏

NAVIeliteの特徴は、カーナビメーカーの技術やノウハウをつぎ込んでいるという点だ。車載機をアプリに移植しており、ルート案内がきめ細かく、精度が高い点がメリットとしてあげられる。ナビアプリとしては、地図データなどをダウンロードして利用するため、オフラインでも使える点も特徴である。

オンライン地図は、常に最新のデータが利用できるというメリットがあるが、「(サーバー上の)元のデータが最新になっていなければ意味がない。NAVIeliteでは2カ月に1回、最新のデータに更新している」(水野氏)ということで、オフライン地図でも最新の情報を利用できる。通常の更新以外にも、たとえば新道路が開通した場合は1週間で更新することで、データの鮮度を保っている。

この「データ」という部分も、カーナビのノウハウがつぎ込まれている部分だ。単純に「地図」で表面的に見える部分だと、NAVIeliteの地図は、おおざっぱな地図に見えるかもしれない。しかし、これはカーナビから得られた知見をもとにした結果だという。ナビを使用する際に細かい地図だと見にくく、目も疲れやすいからだ。

「できるだけストレスがないということに執着している」と話す廣瀬氏。さまざまな年齢層、さまざまな運転技術の人、いろいろなユーザーが利用する中で、「できるだけストレスがないように、目に見えない部分に磨きをかけてきた」という。

この目に見えない部分が活きるのは、ルート案内をしているときだ。高速道路の分岐案内、右左折の案内でも、多くの人が迷わず、安全に使えるような案内を心がけているそうである。

こうした案内のためには、単なる「地図」としてのデータだけでなく、「案内」をするために多くのデータが必要になる。例えば一番左の車線を走っていて、次の交差点が右折の場合、早めに車線変更を促すような案内だったり、一時停止や踏切、学校の有無など、道路のさまざまな状況に応じた案内をするための情報が、NAVIeliteには詰め込まれているのだ。

こうした情報は、カタログスペックでは比較しづらいが、ユーザーが気付いていなくてもナビがサポートしてくれるので、「事故を起こさない。安全が第一に来る」(水野氏)というナビの使命にこだわっており、結果として「他社とは差がある部分」と水野氏はアピールする。

VIT事業本部製品統括部第2統括グループの水野智仁氏

こうしたナビをするためのUIも独特だ。独特というよりも、より「カーナビライク」なデザインである。画面は横固定、検索方法も50音表から文字を選んでいくなど、とてもカーナビ的。これについて水野氏は、「スマートフォンユーザーからすると違和感があるとは言われるが、車に乗っているときに必要な情報は限られている」と指摘する。案内に必要な部分だけを見せるというカーナビのUIがナビとして適しているため、それを再現しているというわけだ。実際、車内でのルート案内では、ユーザーからの「使いやすい」という声も多いという。

「我々には、自動車文化の中で20年やってきた"顔"がある」と廣瀬氏。そのため、「意固地にカーの中での利用にこだわっている」という。

発売当初は、車載機をそのまま移植した形であったが、ユーザーから届いたさまざまな反応の中から、要望の大きなものに対しては、順次改良を加えてきている。必要な機能は採り入れ、素早くフィードバックすることを心がけているそうで、そうした「スピードが大事」と水野氏は指摘する。

メーカーとしてレスポンスよく意見に対応していくと、ユーザー側の反応も変わってくる。当初問題点があって、それに厳しい意見があっても、即座に対応をしていくことで、「意見が通るメーカー」とユーザーは感じ、悪い点の指摘だけでなく、改善点の提供といったように変化が見られ、ユーザーがついてきてくれるようになるそうだ。

NAVIeliteは発売以来バージョンアップを続けて進化させているが、廣瀬氏は、ユーザーの声を集め、ユーザーと一緒に進化させていきたいと話す。

適切な「案内」をするために、NAVIeliteは高度なルート情報が組み込まれている

「シェア」で進化するNAVIelite

カーナビで培ったデータ、ノウハウ、UIといった技術をつぎ込んで、しかもユーザーの声を聞きながら進化してきたNAVIeliteだが、スマホアプリとしての使い勝手も良くなってきたことで、新たな展開を始めている。

それが、今年に入って搭載されたシェア機能だ。アプリが持っている現在位置やルートの情報、そしてそれに関わる情報を発信し、受け取るといった機能を提供しようと考えたという。

「トモダチナビ」という総称で実装されたシェア機能の第1弾として、Twitterの情報を集めることでの渋滞情報の提供を試みた。この機能では、目的地までのルートはナビが把握しており、その区間に関わる渋滞関連のツイートを表示してくれる。

続いて提供したのが「待ち合わせナビ」。複数台の車があるときに、リアルタイムのルートや現在位置が分かるので、目的地で待ちぼうけを食ったり、1台がはぐれて途中の立ち寄りが出来なかったりといったことがなくなる。

新搭載された「待ち合わせナビ」

これは、あくまで「リアルな友だちやパートナー」を想定した機能で、「一緒に車で出かけるとき」に使うためのものだ。「今はソーシャルが流行りなんですが、友達の形はさまざま。昔もこれから未来も変わらない言葉、トモダチ。友達と仲良く遊ぶためのナビ」(廣瀬氏)として作られている。

お互いの現在地、お互いのルートが分かるので、同じ目的地に向かいながら、別々のルートをたどって途中で待ち合わせてもいいし、同じルートで進むときも、そのままお互いがルートを確認しながら移動できる。

お互いのルートが常に確認できるため、一方が案内を外れてルートが変わっても、相手側にもすぐにそれが分かるので、はぐれることがない。待ち合わせの時も、相手がいつごろ到着するか分かるし、待ち合わせ場所から離れても、相手にそれが通知されるので、ずっと同じ場所で待ち続けなくてもいい。「相手の場所が分かる」アプリはほかにもあるが、「相手のルートが分かる」アプリは他にはない特徴だ。

同社では、「シェア」として3種類を考えており、車載機とスマートフォンで持っている情報のシェア、今回のトモダチナビのような特定のユーザー同士のシェア、Twitter渋滞情報のような世間一般とのシェアを挙げる。今後、機能追加の方向性としてはこの3種類の方向性で検討していくとのことである。

また今後、FacebookとNAVIeliteを連携させることを想定しているという。具体的には、友だちがチェックインした場所に行きたいと思ったときに、NAVIeliteですぐに目的地設定できるようにするそうだ。

また、メッセージの送受信機能も搭載したいという。「遅れそう」「コンビニ寄るよ」といったメッセージが画面上に表示されれば、よりコミニュケーションが取りやすくなる。

NAVIelite登場以来、2年間にわたって開発が続けられてきたが、こうした新しい機能拡張にも取り組みつつ、車載機側の機能の取り込み、アプリ側の機能のフィードバックといった連携も行っていく考え。廣瀬氏は、NAVIeliteの進化は「まだまだ序の口」と強調。「今後もどんどん進化させ、ブランドを大事に育てていくので期待して欲しい」とアピールしている。

(提供:iPad iPhone Wire)