大沢たかお、松嶋菜々子、藤原竜也らが出演し、三池崇史監督がメガホンをとる映画『藁の楯 わらのたて』が4月26日に公開を迎える。幼女を惨殺し福岡に潜伏中だった犯人・清丸国秀(藤原竜也)に向けて、財界の大物・蜷川(山崎努)が「この男を殺してください。御礼として10億円お支払いします。」という新聞広告が掲載したことにより、全国民を巻き込んだ追走劇がはじまる。

大沢たかお演じる警視庁警備部SP・銘苅一基と松嶋菜々子演じるパートナー・白岩篤子に守られながらも、周囲に悪態をつき、全く反省の色を見せない清丸。この”人間のクズ”に対して、藤原竜也と三池崇史監督はどのように向き合ったのか。完成報告記者会見後に話を聞いた。

藤原竜也
1982年5月15日生まれ。埼玉県出身。1997年、蜷川幸雄演出の舞台『身毒丸』の主役オーディションでグランプリを獲得し俳優デビュー。2000年の映画『バトル・ロワイアル』で主役を演じ注目を集めた。その後も、『デスノート』『カイジ』など数々の話題作に出演。三池崇史監督作は、『SABU~さぶ~』(2002年)以来の出演となる。

――お二人のタッグは、2002年に公開された映画『SABU ~さぶ~』以来ですね。

三池「そうですね、作品としては。でも、撮影所とかですれ違ったりはしましたよね」

藤原「『一命』(2011年)の時もそうでしたよね」

三池「そうそう。『SABU~さぶ~』の時もそうだったんですけど、演じて撮ってというあくまでそういう関係なので、一緒に時間を過ごすという感覚はなかったですね。仲良くなって打ち解けて、作品をこうしようとかっていう会話がかなり不得意なもので(笑)」

藤原「はははっ!」

三池「ただ、撮影に入るための準備はしておかないといけないので、それぞれがどんな髪型でどんな衣装を着るかというのはとても大事ですよね。それらを考えている中で衣装合わせに来てもらって、お互いに何かを感じる。でも、そこで違和感が生じて別の衣装で現場に来たとしても、自分自身はその役柄を受け入れているので気づかないんですよね」

藤原「監督が準備を進めていてくれて、僕たちに『じゃあどうぞ』と言ってくれている感じがしました。清丸に関しては、いろいろ考えても分からないことが多かったので(笑)、さらっと現場に入ってやらせてもらいました。だから、僕にとってはすごく居心地が良かったですね」

――10年前もそのような感じだったのでしょうか。

三池「真冬の琵琶湖で、土砂降りでね」

藤原「でしたよね。火つけてね(笑)」

三池「火つけて、うわーっと爆発させて。こんなに熱いものなの? 絶対に事故だよね? って思いながら。でも、撮影だから引くに引けず。撮影行為そのものの中で起こったことは意外と覚えているんですが、その役についてのことなどは作品の中に捨ててきてしまいますね」

藤原「僕なんか、新たな気持ちというか。全然、昔のことなんか考えずに入らせてもらいました」

三池「でも、飢えているというか、獰猛さはますます感じましたよ」

――俳優としての藤原竜也さんの印象は、当時と比べていかがですか。

三池「よく芝居は見せてもらっていたので、ただただすごいなと」

藤原「監督に話を聞いたら、結構見ていただいてたみたいで」

三池「すごいことになってきているなと、この人は(笑)。もし、俳優の道がなかったら、この人はどんな人生を歩んでいたんだろうとか考えてしまいます」

藤原「清丸みたいな…(笑)」

三池「なにをやっているのかとかが全く想像つかない。だから、清丸に近いというか。清丸は自分に正直なだけで、人と違うところはそんなにないんですけど唯一違うのは、幼女が好きで幼女を陵辱しながら性的興奮を得るということ。例えば万引きなんかも、人のもの勝手に盗ったらまずいでしょみたいな感覚だと思います」

――完成披露報告会では藤原さんも、清丸について「遠い存在でもない」とおっしゃっていましたね。

三池「誰しも隠している本性ってあるじゃないですか。そろそろ爆発するんじゃないかなって、ある意味期待しているんですけどね(笑)。時代劇を撮っているといつも感じるんですけど、時代劇にはいろいろな制約があります。身分制度や家柄があって、そこでの窮屈な思いからのし上がるような物語を描くんですけども、今の自分より自由に感じるんです。今の方が一見自由が与えられている気がするんですけど、集団として生きていく術やルールに縛られていますよね。その矛盾に対して爆発しそうというか沸騰している感じが、(藤原の)りんとしてひょうひょうとしながらも『何かこの男来てるな!』と感じるという部分につながるんですよね」

三池崇史監督
1960年8月24日生まれ。大阪府八尾市出身。『オーディション』(2000年)や『殺し屋1』(2001年)で脚光を浴び、米「TIME」誌にこれから活躍が期待される非英語圏の監督としてジョン・ウーと並び10位に選出される。以後"バイオレンス"を持ち味にさまざまな映画を制作。代表作は『十三人の刺客』『愛と誠』『ゼブラーマン』『クローズZERO』『悪の教典』など。

――清丸を演じられるのは藤原竜也さんしかいないと?

三池「まず、すてきで魅力的な人じゃないといけないと思っていました。男性でもドキドキするような魅力を持っていないと、ある意味ピュアでどこか美しくないとダメだと思うんですよ。それは作った美しさじゃなくて。そういう部分がないとただのグロテスクな化け物になっちゃいますよね」

藤原「僕は現場に行って、監督に用意していただいたものをそのまま表現させてもらいました。台本にのっていることをそのまま演じたという感じですね。だから役作りとかは特に…」

三池「これって役作りとかはどうすればいいの? 例えば幼稚園の前とかでジーっと…」

藤原「いやいや(笑)」

三池「そう考えると役作りしようがない役なのかもね」……続きを読む。