商店街の通りに建つ川島豆腐店は、遠目でもすぐそれと分かる風格ある店構え

佐賀県唐津市は玄界灘(げんかいなだ)面した風情豊かな城下町。新鮮な魚介に恵まれ、九州でも指折りのグルメな町として名高い。そんな唐津の街中で、まだ商店街のシャッターも開かない早朝から観光客で賑(にぎ)わう店がある。それが、創業200年を超える老舗の「川島豆腐店」だ。

作り立てを食べて欲しいという店主の想い

こちらのお店は、20数年前にざる豆腐でブレイク。でき立ての豆腐を使った豆腐づくしの料理を、早朝から昼にかけて1日3回、各10名限定で食べさせてくれる。店を訪ねて驚くのは、お客のほとんどが市外や県外から足を運んでいるということ。関西や関東方面からやって来る客も多いのだとか。

しかし、いくら有名とはいえ、豆腐がメインの食事って地味ではないか? 唐津は新鮮な魚や佐賀牛など食材に恵まれた土地なのに、それらをさしおいて食べたい豆腐料理ってどんなものなのだろうか?

期待と不安を胸にお店へ。食事処は豆腐販売用の店舗横に作られたうなぎの寝床のような細長い空間で、白木のカウンターを配した隠れ家のような雰囲気。店内はカウンターのみの10席だけ。壁には有名人のサインや手書きのイラストが貼られている。

店内はシンプルモダンな雰囲気だ

そもそもの始まりは、店主が作り立ての豆腐を観光客に味わってほしいという思いからだという。そのため、提供時間は豆腐製造が一段落つく朝8時と10時、昼の12時の3回のみ。予約も受け付けている。

白くきめ細かい、ほかほかのざる豆腐に感動

席に着いたところで目を奪われるのが、カウンターの上の大きなざる豆腐。直径20センチほどのざるに、こんもりドームのように盛られている。しかも出来立てを主張するかのように、ほんのり湯気も立っている。その表面は白く滑らかで、思わずほおずりしたくなるようなキメの細かさだ。

これが全国に知られるざる豆腐だが、メニューはこれだけではない。基本のコース(1,575円)は絞り立ての豆乳から始まり、ごま豆腐に厚揚げ、おから炒(い)り、麦粥(がゆ)に豆腐を入れたうずみ豆腐、みそ汁を楽しめる。うれしいことに、ざる豆腐と厚揚げはお変わり自由、好きなだけ食べてOKなのだ!

中央のひときわ大きい塊がざる豆腐。その右側が厚揚げ

ワインに合う豆腐を求めて開発

早速、ざる豆腐を賞味。まだほんのりと温かい。何もつけずにいただくと、ふわりと大豆の甘みが口の中に広がり、ふだん食べているものより格段に風味が強い。これができ立ての味か。ではしょう油をかけてと思ったが、テーブルに置かれているのは塩。これが正解で、しょう油の風味が邪魔しない分、濃厚な大豆の味が引き立ち、クリーミーさもこの上ない。

ご主人の川島義政さんによると、ワインが大好きでワインに合う豆腐ができないかと試行錯誤を重ねた結果、ざる豆腐が生まれたという。滑らかな舌触りや、大豆の味が濃いのに苦みを感じないまろやかな味を生むコツは、栽培法にこだわった国産大豆を使うことと、豆腐を水にさらすことなく作る独自の製造法にあるそうだ。

そのざる豆腐をカラッと揚げた厚揚げも食べ放題。外はカリッ、中はフワッとやわらかい。しかも注文するたびに揚げてくれるからアツアツが食べられる。

何とも贅沢(ぜいたく)だなあ。ほかにも、風味豊かな炒り豆腐や、具は豆腐だけなのにダシとみそのバランスが絶妙なみそ汁、麦粥のプチプチした舌触りが珍しい“うずみ豆腐”など、豆腐料理とはいえメニューは多彩。豆腐だけでこれほど豊かに、そして満足できる食事ができることに静かな感動を覚えた。

お土産には「ごっくん豆乳」を!

食事を終えて店外へ。満腹感はあるが、身体が軽く全身に元気がみなぎる感じがするのはヘルシーな朝食のおかげだろう。まだ1日は始まったばかり。これから唐津城や唐津焼きの窯元巡りをして、たっぷり唐津が楽しめる。早起きは三文の徳というが、豆腐だけに得は十文に増えた気がする。

ちなみに、基本のコースの他に、焼き魚が付いた2,100円のコースや刺身と焼き魚付きの2,625円のコースもあるので、食欲旺盛な方はぜひご賞味あれ。

そして、食事を満喫した後は、お土産もお忘れなく。青大豆ざる豆腐(630円/500g)、充填(じゅうてん)国産豆乳(270cc/126円)など、大豆の濃厚な味を堪能できる商品がそろっているので、どれもこれも持ち帰りたくなるはず!

左)青大豆ざる豆腐、右)ごっくん豆乳

ネーミングの通りに一気に「ごっくん」してみたい! ごっくん豆乳(158円)