遺伝子組換えスギ(右)も野生型スギ(左)と同じようにジベレリンの作用で雄花が着花し、外見的には区別がつかない

森林総合研究所はこのほど、遺伝子組換えによりスギ花粉形成を抑制する技術を開発したと発表した。

遺伝子組換えにより、スギ花粉形成を抑制する技術を開発

同技術は、微生物を介してスギの培養細胞に遺伝子を導入する遺伝子組換え技術を利用し、RNA分解酵素(バルナーゼ)遺伝子をスギに導入し、タペート層と呼ばれる花粉を取り囲んでいる組織で発現させることによりスギの花粉形成を抑制するもの。

さらに、同技術を用いて作製した遺伝子組換えスギに着花を促進するジベレリン処理を行い、花粉を形成しないことを実験的に検証した。

野生型スギでは雄花の中には花粉があったが(左)、遺伝子組換えスギでは花粉はない(右)

野生型スギでは雄花を潰すと中から多数の花粉が出てきたが(左)、遺伝子組換えスギでは花粉はまったく出てこない(右)

今回の研究成果における今後の森林・林業分野における研究開発の進展に資するポイントとして、遺伝子組換えにより樹木に意図した形質を意図したとおりに付与できたことは、今後の遺伝子組換え技術を樹木に適用し、様々な望ましい形質を樹木に付与できる可能性を示している。

さらに、遺伝子組換えによるスギの雄性不稔化に成功したことは、我が国の大きな社会問題の一つになっている花粉症に対して、遺伝子組換え技術による花粉症対策品種の開発も、今後の対策の選択肢の一つとなることを示す重要な成果であると考えているという。

しかしながら、今回開発した技術はいずれもまだ実験段階であり、今後十分な時間をかけて今回開発した技術の効果と安全性の検証を行うことが必要となる。同研究所ではその際に「丁寧に国民の理解を得ながら研究を進めていくことが、何よりも必要である」としている。

研究成果の詳細については、同研究所プレスリリースにて確認できる。