タブレット市場を席けんするiPadやAndroidデバイスに対抗するため、Microsoftが打ち出した戦略は自社製のタブレット型コンピューター「Surface」を開発し、販売することだった。

Windows 8のリリースと同じ2012年10月26日にデビューしたSurfaceだが、米国を中心とした諸外国のみで日本は提供外。その理由はさまざまな臆測をたくましくすることとなったが、2013年3月15日にようやく日本国内でもWindows RTを搭載した「Surface RT」がリリースされることとなった。

今週は同月1日に行われた発表会の内容やSurface RTの主な特徴をレポートする。

日本マイクロソフト、3月15日リリースの「Surface RT」の概要を説明

Microsoftは2013年2月28日(米国時間)、3月下旬の「Surface RT」展開拡大を発表した。対象となる国々はメキシコ、ニュージーランド、ロシア、シンガポール、台湾、そして日本だ。

同社は既にプレスリリースを出し、公式ブログであるSurface Blogでも同様の発表を行った。さらに今後数カ月内にオーストラリア、中国、フランス、ドイツ、香港、ニュージーランド、イギリスで、Windows 8を搭載した「Surface Pro」を発売することを発表している。

3月1日には日本マイクロソフトが都内でSurface RTの発売を大々的に行い、その様子は本誌既報のとおりだ。同日にプレスリリースが公開され、Surface RTを販売する量販店各社では当日午後2時から予約販売を始めていた(図01)。

図01 ヨドバシ.comなど各量販店では、発表当日の午後2時から予約販売をスタート。ただし、Microsoft Storeによる予約は執筆時点で始まっていなかった

まずは発表会のレポートからお送りしよう。壇上に立った、日本マイクロソフトの代表執行役社長である樋口泰行氏は、「長くマイクロソフトに勤めてきたが、ハードウェアを紹介するのは初めての経験」と述べ、Surface RTの国内発売を説明。また、「ソフトウェアとハードウェアを一社でまとめ上げるスピード感が求められている」と現状把握とSurfaceの発売理由を紹介した。

既に発売されている海外では「Touch Cover(タッチカバー)」に関する不具合が確認されていたものの、国内販売にあたり現在は解消しているという(図02)。

図02 日本マイクロソフト代表執行役社長の樋口泰行氏。Surface RTを片手に魅力をアピールしていた

また、Surface RTの販売は3月15日からスタートし、32GBバイトモデルは4万9,800円、64GBモデルは5万7,800円と、先行発売されていた499/599ドルと現在の円ドル為替を踏まえると少々高く感じてしまうだろう。その一方でTouch Coverは単独で9,980円だが、セット購入の場合は8,000円程度と若干安価な設定が行われている。

なお、海外ではセット購入時は100ドル、単独購入は119.99ドルだ。海外でもTouch Coverに関する価格設定は多くの不満を集めているが、Surface RTで文字入力を前提とする場合、価格は32/64GBモデルそれぞれ5万7,800円/6万5,800円となる(図03~04)。

図03 Surface RTは3月15日から発売開始。価格は4万9,800円から

図04 米国のMicrosoft Storeでは、Surface RTを499ドルで販売している

図05 Surface RTに関する価格一覧

前述したTouch Coverは、薄型キーボードとカバーを兼ねるオプションだが、厚さが3mm増えるものの打鍵感を備えた「Type Cover(タイプカバー)」の選択も可能。ただし、3月15日に時点では販売されず、時期は近日発売予定として示されていない。

今回の発表会では手にすることができなかったが、各カバーをたたむと自動的に文字入力が無効になる設計がなされているため、取り外さずSurface RTの背面にしまい込み、タブレットとして使用することが可能だという(図05)。

Surface RTの詳細説明は、同社執行役コンシューマー&パートナーグループ リテールビジネス統括本部長兼コミュニケーションズパートナー総合本部長の横井伸好氏が行った。

Surface RTのハードウェアスペックや前述したType Coverは、先行販売と同じくブラック/ホワイト/シアンブルーと3色のTouch Coverを用意することを説明。また、付属するOffice 2013 RTは完成版が当初から搭載され、日本国内では商業利用可能なOfficeライセンスを適用していると述べた(図06~08)。

図06 日本マイクロソフトのリテールビジネス統括本部長兼コミュニケーションズパートナー総合本部長である横井伸好氏

図07 Surface RTで使用できるTouch CoverとType Coverの特徴を説明する横井氏

図08 会場で紹介されていた日本語化したTouch Cover

横井氏はWindows RTの互換性に関しても言及し、Windows RTにはWindows 8と同じインボックスドライバーが搭載されていると説明。そのため、Windows 8で動作する数千のデバイスはSurface RTでもそのまま使用可能だという。実際に検証してみないと不明な点が多いものの、ハードウェア構成に左右されないストレージデバイスやインプットデバイスはそのまま使えそうだ。

この他にも米国などで先行販売してる海外モデルと、国内モデルの相違点も説明。Windows RTはあらかじめ日本語言語がインストールされ、Touch Cover/Type Coverは日本語レイアウトに変更。また、商業利用可能なOfficeライセンスを適用していると述べた(図09)。

図09 Surface RTの主なスペック

具体的な数字は出なかったものの、樋口氏はSurface RTおよびWindows 8に関する大々的な広告展開を行うと説明。既に2月25日から都内各所で壁面ティザー広告を展開していることは既報だが、3月11日からテレビCMを始めとする広告展開を開始し、同氏は「Microsoftでは過去最大級のマーケティング」だと述べている。

質疑応答ではSurface RTの日本上陸が遅れた理由として、横井氏は「戦略的順序やOEMパートナーとの関係、Office 2013 RTの商業利用可能なライセンスなど複合的な要素もあるが、新学期が始まるバック・ツー・スクール(新学期商戦期)を重要視した」と述べた。

また、樋口氏は「OEMパートナー各社と連携し、タブレット市場を盛り上げるバリエーションの一つ」とSurface RTの立ち位置を説明し、後継機種に関しても「今後も魅力的な製品をリリースする予定」と述べている。

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