新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、移動ロボット研究所(移動ロボ研)、日立製作所、東芝、三菱重工業、千葉工業大学(千葉工大)、CYBERDYNE(サイバーダイン)の7者は2月20日、「災害対応無人化システム研究開発プロジェクト」が平成24年度で完了することから、同プロジェクトで開発された9分野のロボット技術について、千葉工業大学・芝園キャンパス内の共同研究施設にて公開した。

画像1。今回開発されたロボットの集合写真

今回はプロジェクトの概要と、開発されたロボット並びに関連技術を紹介したい。また別の機会にて、記者発表の模様や、その後に行われたデモンストレーションでのロボットたちの動作する様子などをお届けする予定だ。 今回のプロジェクトは、NEDO主導の人間が入り込めないような過酷な災害現場で災害状況の把握や機材の運搬、復旧活動を行うことを目的としたロボット技術の開発を行おうというものである。要は、自然災害や原子力災害、産業施設全般の事故や災害などを想定して開発されたものだ。

画像2。実用イメージ

きっかけはいうまでもなく東日本大震災であり、さまざまな災害現場に対応可能な汎用性、迅速に投入可能な機動性、過酷環境下での耐久性などの課題があることが明らかとなったことである。

また、さまざまな災害や重大事故などに対し、日本の災害対応ロボットの技術水準のより実践的な向上を図り、災害対応技術の強化を図ると共に、実際の被災現場における有効な対応手段として活用することが必要となっているところだ。そこでNEDOが平成23年度からスタートさせたのが、今回のプロジェクトというわけだ。

今回開発されたロボットは、小型高踏破性遠隔移動装置として発表済みの千葉工大や移動ロボ研などによって開発された小型探査ロボット「Sakura」(画像3)とそのシリーズ機で新型の「Tsubaki(椿)」(画像4)、三菱重工製の車両型作業ロボット「狭隘部遠隔重量物荷揚/作業台車」(画像5)、東芝製の「水陸両用ロボット」(画像6)、こちらも発表済みのサイバーダイン製ロボットスーツ「災害対策用HAL」(画像7)だ。

このほか、今回は実機の披露はなかったが、最大約4tの重量物を最高約30mの高所まで持ち上げられる遠隔操作台車「スーパーリフタ」(画像8)もある。

画像3。狭隘空間先行調査型移動ロボットのSakura。和名は櫻

画像4。重量計測器搭載型移動ロボットのTsubaki。90kg近い重量物のガンマカメラを搭載できるよう設計されている

画像5。狭隘部遠隔重量物荷揚/作業台車。上部にあるのはハシゴ車のハシゴのようなもので、これが延びて、先端についているロボットアームが高所の作業を行う

画像6。濡れても大丈夫というレベルではなく、完全に水没して水中を移動できる水陸両用ロボット(水中での移動の様子は映像で公開された)

画像7。災害対策用ロボットスーツHAL。

画像8。原発建屋内のように階段が急傾斜でロボットが上れないことを想定し、建物の外であらかじめ上方へ持ち上げて上階フロアへ直接入らせることを狙ったスーパーリフタのイメージCG

そして、これらを支援するさまざまな技術も開発された。まず、千葉工大未来ロボット技術研究センター(fuRo)が開発したのが、SakuraやTsubakiのために自動充電を行える「移動ロボット遠隔自動充電システム」(画像9)と自動除染を行える「小型移動ロボット遠隔除染システム」(画像10)、環境の3次元形状とサーモグラフィおよびガンマカメラの計測値を可視化する「汚染状況マッピング技術」(画像11)、操縦訓練用の「災害対応ロボット操縦訓練シミュレータ」(画像12)。

そして日立が開発したのが、専用ロボット(今回のプロジェクトには含まれていない機体)による無人で設置が可能で今回の遠隔操縦型ロボットたちはこれを利用して操作する「無線通信システム」(画像13)と、通常のカメラ映像上に放射線の線量率分布情報を重ねての表示(放射線源の可視化)をすることができる「高放射線場対応型ガンマカメラ」(画像14)の2つ。東芝は、今回の遠隔操縦型ロボットたちの操作をするための共通化した「遠隔操作ヒューマンインタフェース」(画像15)を開発した形だ。

画像9。移動ロボット遠隔自動充電システム。SakuraやTsubakiなどが自動で充電を行える。これを用いることで、充電やバッテリ交換といった作業で作業者が被曝することがなくなる

画像10。小型移動ロボット遠隔除染システム。これを用いることで、ロボットの除染で作業者が被曝するという事態を避けられるようになる

画像11。汚染状況マッピング技術では、施設内の形状をレーザーセンサで把握し、その上にサーモグラフィーやガンマカメラで得た情報を重ね、放射線汚染源などを含めた施設内の状況を立体的に把握することができる

画像12。災害対応ロボット操縦訓練シミュレータ。あらかじめ探査したい内部の環境をCGで再現し、現場の環境に近い形で訓練が可能

画像13。全自動で設置できる(よう開発中の)通信システム。無線を2回線備え、電源ケーブルが切断しても8時間はバッテリで動作するなど冗長構成になっている

画像14。通常のカメラがとらえた映像に放射線源を色で重ねて表示するので、どこの放射線量が高いかが一目で分かる

画像15。遠隔操作ヒューマンインタフェースは、遠隔操作型ロボットのための操縦システム。ゲームパッドで操作し、基本操作が統一されたている

プロジェクト終了後も、NEDOは同プロジェクトの成果が被災現場に実際に投入され、課題の解決に活かされるよう、経済産業省を初めとする関係機関、企業などと協力していくとしている。

各ロボットについては、今後もそれぞれを開発した企業や大学などが、災害現場での実用性を高めるための課題に取り組んでいく予定だ。またNEDOでは、日本が世界に誇るロボット技術の更なる向上、ひいてはロボット産業の競争力の強化と発展に努めていくとしている。

なお冒頭でも述べているが、各ロボットの詳細な特徴やスペック、用途などについては別記事でリポートする予定だ。