ソニーは2月21日、消費電力10mWを実現したモバイル機器向けGNSS(全地球衛星測位システム)受信LSI「CXD5600GF/CXD5601GG」の2品種、ならびにGNSS受信モジュール「CXD5430」1品種を開発し、6月から順次出荷を開始することを発表した。

GNSS受信LSI「CXD5600GF」(左)と「CXD5601GG」(右)

位置情報は、スマートフォンの普及により、さまざまな用途で活用されるようになってきている。しかし、そうした携帯機器の場合、位置測定機能に伴う電力消費がバッテリーの駆動時間に影響するため、常時使用できずにユーザーが必要時にその都度起動しなければならなかったり、屋内では位置を測定できないなどの課題もある。

そこで今回、同社では独自の高周波アナログ回路技術とデジタル信号処理回路を新たに開発することでこうした課題の解決が図られたという。高周波アナログ回路では、専用の低消費電力ADコンバータ(ADC)や低雑音増幅器、位相同期回路(PLL)などを開発したほか、デジタル信号処理回路では、機能ブロックごとに電源とクロックの制御を最適化する設計技術などを採用したという。これらにより、例えば、衛星追尾中は必要な機能ブロックのみを動作させ、それ以外の部分は入力クロックの停止や電源遮断を行うことで平均消費電力を低減することが可能となり、その結果、低消費電力と高感度の両立が可能となり、これまで高周波アナログ回路だけで10mWを超えていた消費電力をGNSS受信LSI全体としてそのレベルに抑え込むことに成功したという。

また、スマートフォンに搭載されている加速度センサやジャイロセンサ、地磁気センサなど複数のセンサからの情報を組み合わせて演算処理することで、高精度な位置測定を可能にするセンサーフュージョン機能を内蔵し、衛星信号の受信だけでは位置の測定が難しい屋内などの環境下でも、高い精度で測位できる自律航法(デッドレコニング)を実現。これまでは、モバイル機器のホストCPUに各々のセンサドライバを搭載する必要があったが、同製品は各々のセンサを制御する機能を内蔵しているため、ホストCPUにはセンサドライバが必要なく、センサフュージョン機能の開発容易化が図れるようになるとしている。

測位方式は、人工衛星を利用したGNSSであるGPS(全地球衛星測位システム)のほか、GLONASS(全地球衛星測位システム)やQZSS(準天頂衛星システム)、SBAS(静止衛星型衛星航法補強システム)に加えて、IMES(屋内測位システム)の5種類に対応している。

なお同社では今後、同製品を低消費電力と屋内外を問わない高精度な位置の測定ができるスマートフォンやタブレットのほか、デジタルスチルカメラやカーナビゲーション、腕時計などでも採用を目指した取り組みを図っていくほか、低消費電力性能を生かした新たな商品開発やサービスの可能性といった応用範囲の拡大を模索していくとしている。

サンプル価格は「CXD5600GF」が1000円、フラッシュメモリを搭載した「CXD5601GG」が1500円、フラッシュメモリと周辺部品を搭載した受信モジュール「CXD5430」が3000円となっている。

測位システムとGNSS受信LSIのイメージ図

従来製品の構成イメージ図(左)と同製品の構成イメージ図(右)