アーティスト・村上隆がはじめてメガホンをとった4月26日公開の映画『めめめのくらげ』のフッテージ映像が初公開。これにあわせ、村上隆監督による同作品のティーチインが東京都・六本木ヒルズにて行われた。

映画『めめめのくらげ』ティーチインに登壇した村上隆監督

映画『めめめのくらげ』は、10年以上前からフルCGアニメーション作品として構想があった企画を実写映画として制作したもの。同氏は「60~70代のサブカルチャーを背景にした作品のエッセンスを共有可能な媒体」として映画を模索していたという。表現の方法をアニメーションではなく実写に変更した理由について、「映画の文法が理解できなかったので、まず情報量が多い実写でやろうとふんぎった」としながらも、「裏目にでて大変なことになっています」と苦笑。同作品は2年以上にわたって制作され、CGは完成前であるにもかかわらず1,000カットにも達した。また、すでに続編となる第2作の撮影も終了しているという。

また、村上は、初めての映画制作にあたり「現場と僕のイメージが隔たっていて、その穴を埋めていくのが大変でした」と苦労した点について言及。その詳細として、「邦画業界では、期間と予算の兼ね合いの中で作成したコンピュータグラフィックス(CG)を、監督や製作者がうまく編集するのがひとつのフォームになっているように思います。しかし、今回の作品に登場するクリーチャー(劇中では「ふれんど」)達は、僕も見たことがないキャラクターであるため、一度できあがってから性格づけをしたり、いきいきした感じを出したりしたかったのです。現場を困らせてしまいましたが、何度もやり直した結果、自信を持ってお届けできるものになっています」と語った。

さらに、同作品の主題歌に、kzの代表曲「Last Night, Good Night」を起用した理由として、「初音ミクはいまや日本を代表するサブカルチャーのアイコンです。日本に向けた映画ではありますが、日本以外の国でも観てほしい。そこで、日本の代表的なアイコン、そしてkz氏の音楽を、どうしてもこの作品と合致させたかった」とコメントした。

これまで現代アートの領域で活躍してきた村上は、トーク中に「(村上隆というアーティストは)日本ではからきしで、Twitterでディスられる対象」と冗談めかしつつ語る一方で、同作品は日本に向けて「村上隆の芸術の世界観」を世に問う作品であると力説。「現代美術は西洋のルールに沿って表現する分野で、日本では理解してもらう頻度は低かったのですが、映画はたくさんの日本人が見ていて、観客の目も肥えています。そこで、僕が今までやってきた芸術の世界観をこの世に問うという想いで、力んでやっています。たくさんの方に観ていただきたいです」と意気込みを述べた。

村上隆監督(左)と、同作品に登場する「くらげ坊」