ロシアの東シベリアで地表付近の永久凍土が融解し、過剰な土壌中の水分によってカラマツ林の枯死が進んでいることが、海洋研究開発機構地球環境変動領域の飯島慈裕・主任研究員らと名古屋大学、ロシア科学アカデミーなどの共同チームの研究で分かった。大規模な森林の変化は、東シベリアにおける大気と陸の間の熱や水蒸気のやり取りも変化させ、日本を含む北東アジアの気候に影響する可能性があるという。

陸域の集中観測地点(左図の●)及びヤクーツク・観測サイトでの2007年、2008年夏の森林の変化(右写真)
(提供:海洋研究開発機構)

研究チームは1998年から東シベリアのヤクーツクで、気温や降水量、地温、土壌水分などの総合的な観測を行っている。その結果、2004年以降に冬の積雪量と夏の降雨量が共に増加する年が3年間続いたことで、地表付近の永久凍土の融解が進み、表層土壌の水分が過剰な状態となっていること、森林の枯死も07年から顕著になっていることが分かった。

森林が枯死している場所は、調査指標とした50メートル四方のカラマツ林のうちでも、永久凍土が周囲よりも深く融け、地下水が集まりやすくなっていた。06-11年の間に約15%のカラマツが枯れ、生き残っている樹木の蒸散能力もかなり低下していた。根の生育環境が悪化したことで、枯死が進行していると考えられるという。

こうした現象は、地球温暖化の影響による「水循環の変化」が、東シベリアでの降雪量・降雨量を増加させ、陸上植物に現れたものと考えられる。永久凍土の融解は、森林の衰退による炭素の収支にも変化をもたらし、永久凍土地域からの二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスの放出にも影響を与えることから、今後も北極域の変化に注視していく必要があるという。

環境学術誌「エコハイドロジー(Ecohydrology)」(10日)に研究論文“Sap flow changes in relation to permafrost degradation under increasing precipitation in an eastern Siberian larch forest”が掲載された。

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