三菱電機は2月7日、リアプロジェクション技術を応用し、様々な曲面や形状に映像表示ができるディスプレイシステムを開発したと発表した。車載向けにデザインと一体化できる曲面対応ディスプレイとして採用を目指す。

今回、開発されたディスプレイシステム。リアプロ技術を応用し、様々な曲面や形状に映像表示ができる。

車載用ディスプレイでは、曲面を多用した車内デザインと一体化させるため、様々な曲面や形状に対応したものが自動車メーカーから求められている。これを受けて、三菱電機では、2011年12月に開催された「第42回東京モーターショー」において、コンセプトカー「EMIRAI」にリアプロ技術を応用した曲面ディスプレイを搭載し公開したいたが、今回、この曲面ディスプレイを元に自動車への搭載に見合う光学エンジン、耐環境技術などを新たに開発したという。

開発品の特徴は大きく3つ。1つ目は光学エンジン。表示面内における曲率変化の大きい領域の画像ぼやけを抑制し、様々な表示面形状に映像表示できる独自の曲面可変光学系を開発した。従来のリアプロ技術では、表示するスクリーン形状に合わせて、その都度、光学エンジンを設計する必要があった。これに対し、今回の製品は、同一の光学エンジンで様々なデザインのスクリーンに調整して表示することができる。また、画面歪み補正と呼ばれる映像入力信号処理を行い、スクリーンで発生する歪みを考慮して入力映像を変形させることにより、様々な曲面や楕円・三角などの形状のスクリーンに歪みのない画像を表示できる。

光学エンジンのシステム構成図

2つ目は、車載環境に対応した高信頼性構造。高温時の部品の性能低下と寿命劣化を避けるため、高効率放熱構造と自然冷却・強制冷却を組み合わせたハイブリッド冷却による高効率冷却器を開発した。これにより、ディスプレイ光源として使用するLEDの発光効率低下を抑えている。また、投射画像に影響する振動や衝撃時の光学エンジンや筐体の変形を抑制し、画像乱れが発生しない構造を実現した。さらに、外光を吸収しやすい樹脂製スクリーンの採用により、明光下での高い視認性を確保している。

3つ目は画質の向上。一般的なTFT-LCDのバックライトには白色LEDが用いられているが、同製品では、純度の高いRGB3色のLEDを光源に採用することにより、通常のTFT-LCDと比べて約1.5倍広い色再現範囲を実現。これまで再現できなかった鮮やかな色が表示でき、視認性を向上させた。また、光センサを用いて温度特性の異なる3色のLEDの発光を制御し、色バランスを保つことにより、車載環境の幅広い動作温度範囲で安定した色再現を確保したという。

光源にRGB3色のLEDを採用。白色LEDバックライト搭載のTFT-LCDを比較して色再現範囲は1.5倍を実現している。

一方で、リアプロジェクション技術は投写して映像を表示するため、奥行きサイズが増すことや、視野角が狭いという課題がある。奥行きに関しては、「具体的な数値は公表できない。ただし、車載のインパネに求められるスペースに入る程度」(同社 先端技術総合研究所 映像入出力技術部 部長の南浩次氏)とした。視野角に関しては、「車載用ディスプレイの場合、見るのは運転席と助手席に座る人に限られており、広視野角はあまり求められない。むしろ視野角を限定して、コントラストを向上させたり、低消費電力化に技術を振り向けている」(同社 先端技術総合研究所 映像入出力技術部 投写ディスプレイ技術グループ グループマネージャーの小島邦子氏)という。なお、表示デバイスはDLPを採用しているが、システムの最適化により、LCOSや高温Poly-Si TFT-LCDなど他方式のデバイスにも対応できる。

現在、同製品は社内でのテスト・評価段階にあり、「今後は、自動車メーカーでの検証に進めて、2017年の実用化を目指している」(南氏)とコメントしている。

なお、開発品のスペックは、凹面、凸面混在スクリーン品は表示面曲率が100mm(中央部最小値)、表示サイズが290×130mm 解像度が1920×861画素。凸面スクリーン品は、表示面曲率が300mm(最小値)、表示サイズが290×130mm、解像度が1920×861画素となっている。