日本アイ・ビー・エム(日本IBM)は2月6日、Power7+プロセッサを搭載したPower Systemsサーバとして、1プロセッサあたりの仮想サーバ数を従来比で2倍に、処理能力を同90%向上させたエントリおよびミッドレンジモデルを発表した。

今回Power Systemsサーバとして追加されたのは、中規模ビジネス向けモデルとして「IBM Power 760」、「IBM Power 750 Express」の2台、エントリモデルとして「IBM Power 740/720 Express」、「IBM Power 730/710 Express」の4台、そしてOSをLinuxに限定することで低価格を実現した「IBM PowerLinux 7R1/7R2」の2台の合計8台。

日本アイ・ビー・エム 常務執行役員システム製品事業担当の三瓶雅夫氏は今回の製品群の位置づけを、「IBMのシステム製品としてはエンタープライズシステムズ、エキスパート・インテグレーテッドシステムズ、Smarter Storage、Volume Systemsの4つのポートフォリオに分けているが、エンタープライズシステムズとしては、zEnterprizeとハイエンド向けのPower Systemsがあるのみであり、今回の製品拡充でエントリならびにミッドレンジのユーザーにも対応が可能になる」と語る。

今回発表された8製品のIBMシステム製品内での位置付け

これらの製品に搭載されるPower7+プロセッサは、基本的な性能面などはハイエンド向けサーバ製品と同じで、エネルギー効率の最適化を図る「Energy Scale」や稼働中にコアを再起動可能な「Power On Reset Engine(PORE)」、L3キャッシュエラーを自動で回復する「L3 Cache Dynamic Column Repair」、L3キャッシュの1/8をオフライン化することで電力を最大95%削減できる「Winkleステート」などが追加されているほか、Power 760では1チップに2ダイ搭載し、12コア(Power7+そのものは8コアだが、その内2コアずつ動かないようにし、6コア×2ダイ)構成にしたデュアルチップモジュール(DCM)が採用されている。

2ダイで16コアにしなかったのは、チップの歩留まりなどの問題も考えられるが、最大の問題は消費電力と発熱力の抑制だという。実際、最大4ソケット(48コア)構成が可能であるが、その場合、消費電力は2400Wであり、動作周波数もPower7+の最大値である4.4GHzではなく3.4GHzもしくは3.1GHzに落として電力消費量の増大と発熱を抑えているという。

また、従来の0.1コアから0.05コアで仮想サーバの1区画を構成可能となっており、これにより1コアあたり20区画、12コアで240区画、48コア構成であれば960区画の構成が可能となっており、1つのサーバに集約可能な仮想サーバ数を増やすことができるため、システムの集約と最適構成のバランスがとりやすくなったとする。実際に国内のユーザーであるエクシングでは、Oracleデータベースへ接続していた15台のx86サーバをPower Systemsに置き換えることで、3台のサーバに集約、Oracleデータベース関連費用を2/3に削減することに成功したという。

さらに、Powerサーバ製品群では、筐体内だけではなく、複数の筐体をまたぐ形で仮想サーバを移動させることが可能であり、これにより稼働中のサーバからアプリケーションを新しい筐体に移動することができるため、従来の移行方法に比べて短期間での移行ができるようになるとする。

このほか、同製品群では、未起動のプロセッサコアを処理能力が不足してきた際に、稼働中のコアとして組み入れることが可能なほか、稼働中のプロセッサに障害が発生した際に代替プロセッサとして利用することも可能だ。加えて、ファームウェアレベルでの仮想化を実装しているため、外部からのアクセスはできず、その結果、米国NIST(National Institute of Standards and Technology)が運営する脆弱性情報データベース「NVD(National Vulnerability Database)」における脆弱性に関する報告件数はゼロを実現しているという。

Power Systemsファミリの特長

なお、それぞれのサーバ製品の最小構成価格と出荷日は以下の通り(いずれも税別)

  1. IBM Power 760:7,745,800円(出荷開始日:3月15日)
  2. IBM Power 750 Express:4,831,700円(出荷開始日:3月15日)
  3. IBM Power 740 Express:2,388,700円(出荷開始日:2月20日)
  4. IBM Power 730 Express:1,365,300円(出荷開始日:2月20日)
  5. IBM Power 720 Express;945,300円(出荷開始日:2月20日)
  6. IBM Power 710 Express:837,700円(出荷開始日:2月20日)
  7. IBM PowerLinux 7R1:977,200円(出荷開始日:2月20日)
  8. IBM PowerLinux 7R2:1,533,600円(出荷開始日:2月20日)