14年という長きにわたって提供されてきたMicrosoftのIM(インスタントメッセージ)サービスが大きく替わろうとしている。以前から同社は2011年10月に買収したSkypeをWindows 8の標準クライアントとすると表明していたが、2013年3月15日を持って現在のWindows Live Messengerを廃止することが明らかになった。改めて同社のIMクライアントに関する歴史を紐解き、Skypeに移行した理由を愚考してお送りする。

WindowsとIMクライアントの歴史

MicrosoftがIM(インスタントメッセージ)サービスを始めたのは、約14年前となる1999年。「Microsoft Launches MSN Messenger Service」というプレスリリースを発表し、当時は電子メールサービスやインターネット検索サービスなどのブランドとして使用していた「MSN」を冠にした「MSN Messenger」を発表翌日の7月22日にリリース。インターネットへの常時接続が浸透しつつあった当時は、即座にコミュニケーションを取れるIMクライアントが普及しつつあり、筆者もそれ以前からICQ(初期のIMクライアント)を使用して友人・知人と連絡を取り合っていた。蛇足だがICQは現在でもバージョンアップを続け、2012年5月には最新版がリリースされている。

IMの歴史を紐解くと、UNIXのコマンドラインプログラムである「Talk」が源流にあるのは明白だが、チャットシステム自体は1980年代に流行したパソコン通信にも組み込まれている。インターネット上でもIRCというチャットシステムが古くから稼働し、IM自体のアイディアは目新しいものではなかった。だが、複数対複数ではなく、個人対個人でメッセージの送受信を可能にする実装を実現したことで、多くのユーザーが新しいコミュニケーションツールとして注目されたのだろう。

Windows OSの標準IMクライアントとして普及しつつあったMSN Messengerだが、一部では混乱を招くことになってしまった。それがWindows XPにバンドルされた「Windows Messenger」。MSN MessengerとWindows Messengerの基本機能に大差はないが、設計目標や想定する用途が異なるため、二つのアプリケーションが存在することになってしまった。

そもそもWindows Messengerはビジネス、MSN Messengerはコンシューマ向けとして位置付けされており、Windows Messengerではテキストの暗号化やOfficeアプリケーションとの連係機能を備えている。その一方でMSN Messengerは、アニメーション機能を備えた絵文字やアバターとなるアイコンを備えるなど、多角的なコミュニケーションツールとしての機能を強化。バグフィックスもMSN Messengerの方が頻繁だったため、多くのコンシューマユーザーはWindows Messengerではなく、MSN Messengerを使用していた(図01~02)。

図01 Windows XPの標準アプリケーションとしてバンドルされていた「Windows Messenger」

図02 MSNブランドで提供されていたIMクライアント「MSN Messenger」

この間、MicrosoftはWeb上でメッセージ交換をする「MSN Web Messenger」やMac OS版となる「Microsoft Messenger」などをリリースしていたが、同時に興味深い実験を行っていた。それがIMクライアントにP2P(Peer to Peer)を実装した「3°(Three Degrees:スリーディグリーズ)」。グループコミュニケーションを好む若年層を対象にチャットやファイル共有といった機能を提供するIMクライアントである。

本社主導のベータテストが行われ、"MSN Messenger、Windows Messengerに続く第三のIMクライアント"として注目を集めていた。だが、ビジネスモデルやビジョンを確立できなかったため、リリースには至っていない。もっとも3°で検証された結果はMSN Messengerや、Windows Vista以降のP2P機能として転用されている(図03)。

図03 P2P機能をIMクライアントに実装した「3°(Three Degrees)」

バージョン8.0にあたるMSN Messengerは、Microsoftのブランド戦略から2005年12月に「Windows Live Messenger」に改称。オフラインメッセージ機能や配色の変更など数多くの機能を備え、その後も8.1、8.5とバージョンアップを繰り返している。先ほど登場したWindows Messengerも、現在はLync Onlineとしてビジネス向けのIMクライアントやオンライン会議機能を提供するサーバー&クライアントセットに生まれ変わった。この辺りは近年の話なので割愛するが、各社が多種多様なIMクライアントをリリースし、2000年以降のIMサービスは群雄割拠とも言える時代だったのだ(図04)。

図04 役目を終えた最後のIMクライアント「Windows Live Messenger」