ドワンゴは10日、東京・六本木ニコファーレにてニコニコミュージカル「千本桜」のキャスト発表・記者会見を開催した。

会見では初音未来(初音ミク)役にAKB48の石田晴香が決定したことが発表され、主演となる靑音海斗役の加藤和樹ら主要キャスト5名が登壇し、意気込みなどを語った。

左から富田麻帆、石田晴香、加藤和樹、市川美織、鳥越裕貴

そもそも「千本桜」とは、そしてニコニコミュージカルとは何かというところから解説しよう。

「千本桜」は2011年9月17日にニコニコ動画に投稿された黒うさPによるボーカロイド曲。和風ロック調の楽曲とキャッチーなメロディー、さらに動画製作者として名高い三重の人によるハイクオリティなPVが相乗効果を生み、投稿からわずか1カ月強で100万再生を突破した大人気楽曲である。投稿から1年4カ月経った現在、再生数は500万弱まで伸びており、これは数あるボカロ曲の中でもトップクラスの人気と勢いだ。

ニコファーレで流れた「千本桜」のPV。圧巻のクオリティだ

初音ミクも映像で出演

また、現実世界でもカラオケランキングの上位に入っており、ゲーム等にも収録。さらに「千本桜」を親作品にした二次創作動画はニコニコ動画全体で8,000件以上にのぼるほどである(千本桜 黒うさP で検索した場合)。

対する「ニコニコミュージカル」は、ドワンゴが主催するミュージカルを指す。もともと「ミュージカル・テニスの王子様」などの作品を手がけてきたプロデューサー・片岡義朗氏が総合プロデュースを担当しており、劇場はもちろん、ニコニコ生放送でもチケットを購入すれば見ることができるのが特徴だ。ネットチケットは閲覧数に上限がないため、結果的に会場チケットの価格を普通の舞台よりも低価格にしやすいというメリットがある。2010年12月から現在に至るまで多数の舞台が行われており、基本的には何かしらの形でニコニコ動画が絡んだ作品が多い。

例えば第2回作品「ニコニコ東方見聞録」は、メインキャストの多くにニコニコ動画の著名ユーザー(つまり"素人"だ)が抜てきされていて、内容も内輪ネタ満載のニコニコユーザー向け舞台であった。また「ココロ」や「カンタレラ」といった作品は、今回の「千本桜」と同じく同名の人気ボカロ曲をモチーフにしたミュージカルである(ちなみに「カンタレラ」は「千本桜」と同じ黒うさPの作品である)。

そして今回発表されたニコミュ最新作「千本桜」。主人公となる靑音海斗役に加藤和樹が決定していたこと以外はすべてが謎に包まれていたのだが、この日の会見で、初音未来(初音ミク)役にAKB48の石田晴香、鏡音鈴(鏡音リン)役にAKB48市川美織、鏡音錬(鏡音レン)役に舞台俳優の鳥越裕貴、巡音流歌(巡音ルカ)役にグラビアアイドルの富田麻帆、朱音鳴子(MEIKO)役に中野風女シスターズの長谷川愛が抜てきされたことが発表となった。また、高崎翔太、湯澤幸一郎、小林健一、岸祐二といった実力派たちも出演する。この日は、長谷川愛以外の5名がニコファーレに登壇した。

コスプレした感想は「髪が重いです(笑)」とのこと

靑音海斗役に気合十分の加藤和樹

靑音海斗を演じる加藤は、今の心境について「珍しく心臓がバクバクしています。キャラクターありきのものなので、靑音海斗に恥じないようがんばりたい。生身の人間が演じるからこそ見られる表情や感情を僕自身も楽しみにしているし、お客さんにも楽しみにしてもらいたい」と意気込みを語り、「今年は個人的にいろいろなことを知ろうと思っています。『千本桜』を通して出会えたことを大事にして、より深い世界を探っていこうと思います。見に来てくれた人に感動を、元気を与えられたら」と生放送の視聴者に呼びかけていた。

一方、初音未来を演じる石田晴香は大のニコニコ動画好きとしても知られており、かつてはニコニコ生放送で冠番組を持っていた実績も持っている。そんな石田は今回の抜てきについて、「もともと原曲が本当に大好きです。コスプレも初めてだし、舞台で演じることも今回が初めて。自分をどう表現するか手探りですが、自分なりの初音ミクが演じられるようがんばりたい」と舞台初挑戦に緊張した様子を見せながらも、笑顔で意気込みを語っていた。

鏡音鈴(鏡音リン)役の市川美織

鏡音錬(鏡音レン)役の鳥越裕貴

巡音流歌(巡音ルカ)役に富田麻帆

さて、そんなミュージカル「千本桜」、いったいどんな内容の舞台になるのか。あらすじは次のとおりだ。

西暦2011年、和暦大正 100年。ここは今もなお大正時代が続く平行世界。
長きに渡る世界大戦は世界各地で起こる異常気急や大災害により停戦状態が続いていた。
旧帝都東京も『大正兇変』と呼ばれる大災害により、一時壊滅状態に陥るも、その名称を新帝都『桜京』と改め、現在では人々のたゆまぬ努力の甲斐あって、新帝都として奇跡的な復興を遂げつつあった。しかし光ある所には影が色濃く浮かび上がる。大正兇変を境に生じた歪な世界。

演出・茅野イサム氏と脚本・三井秀樹氏によると、今回は小説版の設定・世界観を違う視点で取り上げる舞台オリジナルストーリーになるという。

脚本・三井秀樹氏(左)と演出・茅野イサム氏

小説版の主人公は初音未来だが、舞台版の主人公は靑音海斗。この点について三井氏は「靑音海斗側で熱いドラマを突き詰めていきたい。日本を守る話なので、前面に立って戦うのは男ではないかと思い、そこに初音未来を絡めていくためにも海斗を立てる物語にした」と語り、茅野氏は「靑音海斗をボロボロにしたい。加藤和樹がかっこいいのはもう見慣れているので、どん底まで落としたい」とニヤリ。舞台版ならではのストーリーと演出に自信をのぞかせた。

また、原作者の黒うさPによる舞台オリジナル楽曲も用意されているといい、各俳優には歌唱だけでなくアクションシーンも予定されている。オリジナル楽曲の詳細はまだ不明だが、三井氏・茅野氏によれば「恋の歌」になるという。黒うさPのファンには見逃せない情報だ。

2人の共演がどんな化学反応を引き起こすのか

ミュージカル「千本桜」は2013年3月13日(水)~3月24日(日)、銀座博品館劇場にて上演される。会場まで足を運ぶリアルチケットは全席指定6,800円 (税込)、ニコニコ生放送で鑑賞するネットチケットは前売り:1800pt/当日:2000pt(1pt=1円)となる。ニコニコ動画プレミアム会員は1月10日から15日までリアルチケット抽選先行予約受付中。