Dellは12月13日、テキサス州オースティンで開催した年次イベント「Dell World 2012」において、OpenStackベースのパブリッククラウドを技術プレビューとして発表した。クラウド事業を率いるバイスプレジデントのNnamdi Orakwue氏は「エンドツーエンドのサービス」を差別化としていくと述べた。

Nnamdi Orakwue氏、2年前のDell入社以前はIBMのグローバルサービスに勤務

ソリューション企業への転身を図る同社にとって、クラウドは重要な分野。同イベントで、Orakwue氏はクラウド戦略についてのセッションを開き、OpenStackベースのパブリッククラウド、プライベートクラウド(共に技術プレビュー)のほか、プラットフォーム・アズ・ア・クラウド(PaaS)の技術プレビュー版も発表した。

これまでMicrosoftやGoogleなどのクラウドサービスプロバイダにインフラを提供してきたDellがクラウド分野に参入したのは、2011年8月のことで、VMwareの技術を土台としたIaaS「Dell Cloud with VMware vCloud Datacenter Service」を発表した。その後、デスクトップ・アズ・ア・クラウド、実装フレームワークなどのサービスとラインナップ拡充し、今秋にはクラウドストレージサービスのNirvanixとの提携によるクラウドストレージもローンチしている。

エンドツーエンドとして、パブリッククラウド、ホステッドマネージドプライベートクラウド、業界向けのクラウド、それにハイブリッドを揃えるDellのクラウドポートフォリオ

セッションでOrakwue氏は、サービス事業の下で展開するクラウドにおいて「フォーカスはプライベートクラウドにある」と言い切る。

「顧客企業がプライベートクラウドを設計・構築するのを支援する。Active Infrastructure(Dellのコンバージドインフラ・ブランド)とVMwareやMicrosoftを組み合わせてもよいし、OpenStackベースのプライベートクラウド構築でも支援できる」とベンダー中立性を強調した。

ハイブリッドでは、買収したBoomiの技術が鍵を握る。オンプレミス、SaaS、クラウドアプリケーションとの統合を実現し、一元化した管理ビューを提供するという。パブリッククラウドはあくまでもこれらの延長としての位置づけで、「エンドツーエンドのクラウド展開サポートの一部」と説明した。

Gartnerのアナリスト、Bryan Britz氏はDellのクラウド戦略について、「(Dellがターゲットとする)確立した市場でのクラウドの受け入れが始まったところであり、タイミングとしては悪くない。Dellは実用的なアプローチをとっている」と評価した。

Dell World会期中にOrakwue氏と話をする機会があり、プライベートクラウドの位置づけ、OpenStack戦略、マネージドサービスとの関係などについて聞いた。

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パブリッククラウドでのターゲット顧客は?

Orakwue氏 -- 誰でも利用できるが、ターゲットは既存のDellのプライベートクラウドの顧客だ。顧客の中にはAmazonなどのパブリッククラウドをすでに利用しているところがあるが、Dell 1社でプライベート、パブリックと全てを提供する。これにより、プライベートとパブリッククラウドのシームレスな連携を提供する。例えば、将来的には災害予測を受けてパブリックからプライベードに動かすなど、顧客がクラウドを活用できるようナビゲートしていきたい。

Amazonのパブリッククラウドサービスは素晴らしいが、SLA(品質保証)は必ずしもエンタープライス顧客向けとは言えない。どちらかというと、ベンチャー向けのセルフサービス、自己責任という要素が強いようだ。われわれはAmazonやGoogleのようなコモディティ事業はしない。つまり、価格競争はせず、パブリッククラウドのメリットも活用したいという顧客のニーズに答えてサービスを重視する戦略だ。

2011年にDell Cloudをローンチしたが、現在の状況は? プライベートクラウドの顧客数は?

Orakwue氏 -- 災害復旧用、テスト用としての利用が多く、企業規模としては中小規模の企業が中心だ。プライベートクラウドの顧客は1000社以下で、95%を米国企業が占める。全般として、顧客の関心は非常に高い。

OpenStackへのコミットを強調しているが、なぜOpenStackなのか?

Orakwue氏 -- OpenStackに対するコミュニティの支援は大きく、クラウドの将来はOpenStackになると考えている。企業の中には、VMwareなどに高いライセンスを払いたくないと思っているところもあるようだ。ロックインへの懸念もある。OpenStackはこれらの問題の解決策となる。

DellはOpenStackのゴールドメンバーで、ボードにも席を持っている。OpenStackに精通したスタッフを100人規模で抱えており、今後も増やしていく。

OpenStackは技術的に成熟していないという指摘があるが?

Orakwue氏 -- 100%同意する。われわれとしては、リリース直後はバグが多いため、4~6カ月経ったコミュニティ間である程度修正されたものを利用しようと考えている。OpenStackは現在、年に2回リリースされているが、Dellはそのうちの1つをベースに年に1回リリースするようなリズムになるかもしれない。

DellのパブリッククラウドはEssexベース(バージョン2012.1)だ。将来的に、秋に公開された最新のFolsom(バージョン2012.2)にマイグレーションする予定だ。

Hewlett-Packard(HP)もOpenStackベースのパブリッククラウドを展開した

Orakwue氏 -- HPのクラウドについて熟知していないが、SLAに問題があると聞いている。HPはまた、かなりOpenStackをフォークしたようだ。

クラウドが自社のハードウェア事業を変えることになる? クラウド事業による収益の比率の目標は?

Orakwue氏 -- まだ(ハードウェアの事業へのインパクトは)起こっていないが、興味深い方向に向かっていると思う。わたしの任務のひとつが、これまでの考え方から新しい考え方に変わる顧客をしっかりつかまえ、これまでの関係を維持しつつ一緒に変革を遂げることだ。

社内でも意識改革を進めている。これまではDell社内でもサードパーティのクラウドを利用しているところがあったが、2011年にDell Cloudをローンチ後、Dellの各事業部はすべてDell Cloudを利用している。ソフトウェア側でも、レガシーのCRMがあるが、数年前からSalesforce.comを積極導入している。Boomiを使って、社内のアプリケーションとの統合も進めている。

社内的にはかなり野心的なクラウド事業比率目標を持っている。実際、前四半期は前年同期比30%増で成長した。ハードウェア、ソフトウェア、サービスをすべて入れると、すでにかなりの事業規模に達している。

クラウドでは今後どのような分野を強化していくのか?

Orakwue氏 -- 技術ではサービスとしてのHadoopの提供、DellのソフトウェアのSaaS化などを強化する。提供地域として、日本やオーストラリアへの拡大を図っていく。

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デル代表取締役社長の郡信一郎氏

なお、会期中Dell日本支社で代表取締役社長を務める郡信一郎氏が、Dell Worldの会場にて記者との談話を持ち、クラウドを2013年に日本でも提供する計画を明らかにした。

「来年以内には何らかの形でクラウドを提供していく。容量を提供するパブリッククラウドは他社がすでにサービスを展開しているし、パブリッククラウドサービスを提供するプロバイダ自身がDellの顧客という事情があるため、そのような形ではないクラウドになるだろう。もうちょっとサービスのところでDellの特徴が行かせるようなものにしたい」と郡氏は述べ、クラウドをはじめソリューションベンダーとしての地位を日本でも確立したいとの意欲を見せた。