iPhone/iPadでテレビを視聴することは、これまで困難とされてきた。そのような機能を実現する周辺機器は存在するが、iPhone/iPadのみで視聴できなければ価値は半減してしまう。Android端末のように、DTCP-IP対応のDLNAクライアントアプリがあれば……そして先日バージョンアップした「Twonky Beam」により、ついにその願いが現実のものとなった。今回は、これまでiOSデバイスのDTCP-IP対応が困難だった理由と、Twonky Beamの使用感を解説してみよう。

iPhone/iPadが「DTCP-IP」に対応できなかった理由

Twonky Beamのアップデートが話題になった理由は、「iPhone/iPadでも地デジやBS/CS放送が視聴可能になった」ことに尽きるが、その背後にはいくつかの事情が隠れている。まずは、その説明から始めてみよう。

最近発売されたビデオレコーダーの多くは、「DLNA」と「DTCP-IP」という規格で映像のネットワーク配信を実現している。それぞれの登場経緯は異なるが、一般社団法人電波産業会(ARIB)がDTCP-IPを使用したデジタル放送の出力を認めたことを受け、両規格を組み合わせた運用スタイルがAV機器メーカーに選択されたことが、現在につながっている。後にこのしくみは「DLNAリンクプロテクションガイドライン」としてまとめられ、いまやDLNAにおいてDTCP-IPは必須の著作権管理技術とされている。

つまり、DLNAとDTCP-IPに対応した製品であれば、著作権保護された地デジやBS/CS放送の番組をストリーミング再生できるわけだが、そこには「TTL」の扱いという障壁がある。TTLとは、パケットの有効期間を示す値(Time To Live)であり、DTCP-IPではネットワーク上でパケットが通過可能なルータの残数を意味する。そしてTTLの値が「3」を超えた場合には、家庭内のみでの受信を許可するというルールを逸脱したと判定、パケットは破棄されるしくみだ。

スマートデバイスで2強のOSといえるiOSとAndroidは、OSレベルでこのTTL値を取得することができず、その結果アプリ単独の機能ではDTCP-IPに対応できない。国内メーカーの一部Android端末は、TTLを取得できるよう端末に機能を組み込むことでDTCP-IP対応を実現、DLNAによるストリーミング配信機能を提供しているが、グローバルモデル以外存在しないiPhone/iPadではそれが不可能だった。

DTCP-IPを管理する団体のDTLAは、従来TTLの扱いに関し厳しい姿勢を変えなかったが、10月に規定を変更した。技術的に懸念がなく妥当と判断される場合には、TTL値の上限を判定する実装を省略しても構わないと、それまで厳格だった運用方針を緩和したのだ。

今回の「Twonky Beam」のアップデートは、iOSでのDTCP-IPコンテンツ視聴を可能にしたという点で、まさにこの"規制緩和"を受けた措置といえる。それでは、アプリを利用したレビューへと進んでみよう。

DTCP-IPに対応した初のiOSアプリ「Twonky Beam」。右上にある家の形をしたボタンをタップすると、DLNAクライアントとして動作する

DLNAサーバ機能をオンにしたビデオレコーダーに接続すると、このように録画した番組のリストが現れる