東北大学は12月11日、高度な振動制御演算を行う独創的なデジタルマイクロプロセッサシステムを設計し、これを用いて振動制御に外部電源供給が不要な、セルフパワード制振の「振動制御装置」を開発したことを発表した。

同成果は同大大学院工学研究科 航空宇宙工学専攻の槙原幹十朗 准教授らによるもので、詳細は、米国航空宇宙学会誌「AIAA Journal」に掲載された。

従来の外部電源が不要な振動制御は、単純波形の単調な振動しか抑制できず、複雑波形の振動を抑制するには、外部電力が必要であった。今回の研究では、圧電素子に、制御器からの信号で切替るスイッチ回路(デジタルマイクロプロセッサシステム)を取付けることで、こうした課題を解決。プロセッサが演算処理を行い、移動体構造の複雑波形の振動に最適に対応する機能を実現したほか、振動から電気エネルギーを取り出し、デジタルプロセッサの駆動にも電力を供給することにより、電力の自己完結機能を有するシステムを実現した。

これにより電気的に自立可能な自家発電振動制御システムを構築することが可能となり、高度なデジタルプロセッサの演算機能を用いて、複雑振動から電気エネルギーを取り出すエナジーハーベステイングと、振動制御の両方を同時に実現できるようになった。この自立型振動制御システムは、電源不要で従来型のようなバッテリ交換も不要であるため、構造物に多数個の分散配置することで集中制御機能が不要となる「ユビキタス制振システム」が可能になるという。

デジタルマイクロプロセッサ回路の、スイッチの切り換えのみで振動抑制される原理のため、万一、制御振動が誤って振動が大きくなるなどの不安定要素はほぼ無いという。 現実的には、単調振動の構造はほとんどなく、多くは複数振動が重ね合わさる複雑振動となるが、実験では、振動を1つの圧電素子で8割抑制することが確認された。

なお、研究チームでは適用分野として、外部電源に頼れない構造物などの振動制御に向いているとしており、タイヤ・タービンなどの回転体に有用なほか、航空機・電車・自動車・長い橋梁・防音壁などの分野での実用化が期待されるとしている。

振動で発電し、揺れを制御するプロセッサを駆動させることで、自立型の振動制御が可能となった

制振実験の様子