花王は12月6日、成人を対象とした継続摂取試験を通して、コーヒー豆に含まれるポリフェノール「クロロゲン酸類」の持つ生理機能と、焙煎によって生じる成分との関係について調べたところ、クロロゲン酸類に血管の最内層にある細胞が有する機能で、血管壁の収縮・弛緩を調節して血圧を正常に保つなど、重要な役割を担っている「血管内皮機能」を改善する作用ことなどを見出したと発表した。

同成果は同社ヒューマンヘルスケア研究センター・ヘルスケア食品研究所と生物科学研究所によるもので、世界のコーヒー関連研究者が集う「第24回 国際コーヒー科学会議(ASIC)」にて発表された。

研究は3つに分けて実施された。1つ目は「クロロゲン酸類による血管内皮機能改善」について。20名の成人男性を対象に、1日にクロロゲン酸類を140mg摂取できるように設計した試験飲料または、対照飲料(クロロゲン酸類を含まない飲料)のいずれかを継続摂取した際の、血管拡張反応を指標とした血管内皮機能を、1カ月ごとに4カ月間にわたって測定を行った。その結果、試験飲料を摂取した群で血管内皮機能の改善が認められたという。

クロロゲン酸類による血管内皮機能の改善

2つ目は、「クロロゲン酸類による血圧改善と酸化成分の影響」について。

血圧が正常高値およびI度高血圧者(収縮期血圧が140-159mmHgまたは拡張期血圧が90-99mmHgの範囲)の成人男女(100名)を対象に、1日にクロロゲン酸類を300mg摂取できるように設計した試験飲料(クロロゲン酸類を含み、酸化成分(ヒドロキシヒドロキノン)を低減した焙煎コーヒー)または、クロロゲン酸類を含まず、酸化成分を低減した焙煎コーヒー(対照飲料I)のいずれかを12週間継続摂取した際の収縮期血圧の測定を行った。その結果、クロロゲン酸類を摂取することで血圧の改善が認められたという。

また、同様の試験において、クロロゲン酸類を含み、酸化成分を低減していない焙煎コーヒー(対照飲料II)を摂取した群(47名)においては、血圧の改善は認められず、酸化成分の影響が確認されたとことで、これにより、血圧改善作用を十分に発現させるためには、クロロゲン酸類を豊富にするとともに、焙煎工程で生じる酸化成分を低減させたコーヒーが有効であることが示された。

クロロゲン酸類による血圧改善と酸化成分の影響

そして3つ目は「クロロゲン酸類による体脂肪低減」について。

平均BMI 27.7の成人男女(109名)を対象に、1日にクロロゲン酸類を300mg摂取できるように設計した試験飲料(クロロゲン酸類を含み、酸化成分を低減した焙煎コーヒー)または、クロロゲン酸類を含まず、酸化成分を低減した焙煎コーヒー(対照飲料I)のいずれかを12週間継続摂取した際の身体指標の測定を実施した。この結果、試験飲料群に体重、体脂肪(腹部脂肪)の低減が認められたとのことで、クロロゲン酸類の継続摂取によりエネルギー消費、特に脂質燃焼量が有意に増加することが確認されていることから、体脂肪の低減は体内での脂肪消費を高める作用によるものと考えられると研究グループでは説明する。

クロロゲン酸類による体脂肪の低減

なお、研究グループでは今後、クロロゲン酸類の機能や焙煎で生じる成分の影響についての詳細な研究を進めていく予定としている。