東北大学は12月5日、過食により肝臓で糖代謝が亢進することに応じて発せられる神経シグナルが、「褐色脂肪」によるカロリー消費を低下させて肥満を引き起こすことを発見し、さらにこの仕組みが、太りやすさの違いに関与していることも見出したと発表した。

成果は、東北大大学院 医学系研究科 代謝疾患医学コアセンター 代謝疾患学分野の山田哲也准教授、同・突田壮平助手、同・片桐秀樹教授らの研究グループによるもの。研究の詳細な内容は、米国時間12月4日付けで米国科学誌「Cell Metabolism」に掲載された。

研究グループのこれまでの研究などにより、体には、栄養過多になると、褐色脂肪によるカロリー消費を活発にして、すぐには体重が増えないようにする仕組みがあることが明らかとなってきた。

なお褐色脂肪とは、カロリー消費を行う脂肪細胞のことだ。肥満になりやすさと関係が深く、皮下脂肪や内臓脂肪などのカロリーを貯める白色脂肪とはその性質が異なる。ヒトの成人においても、褐色脂肪の量が体重や体脂肪量と逆相関の関係にあることが報告され、抗肥満の治療ターゲットとして注目されている細胞だ。

しかし、もし、この仕組みが十分に機能すれば、理論的には、過食があっても肥満はおこらないはずだ。ところが実際には、肥満者の数は爆発的に増加している。また肥満者においては、褐色脂肪の働きが悪くなっているという研究報告もあるが、そのメカニズムは解明されていなかった。

そこで研究グループは今回、過剰摂取した余分なカロリーを来るべき飢餓に備えて蓄積するという仕組みを想定し、マウスを使った研究を実施。その結果、「過食によりカロリー摂取が増加し肝臓での糖代謝が高まると、肝臓→脳→褐色脂肪へと神経シグナルが伝わって、褐色脂肪によるカロリー消費を低下させる」という「体に備わった備蓄システム」が発見された。

さらに、この仕組み自体が肥満を引き起こすメカニズムとなっていること、および、このシステムの働きの違いが個々の太りやすさの違いを規定していることも証明した形だ。

肥満にならないこと、あるいは肥満を改善することは、糖尿病・高血圧・高脂血症を併発するメタボリックシンドロームの根本的な予防・治療法として重要だが、実際はほとんどの人にとって食事療法はうまくいかないという現状がある。

今回の研究成果は、体重増加のメカニズムや太りやすさの違いの要因に基づき、カロリー消費の調節により肥満やメタボリックシンドロームを改善するという新しい観点からの予防・治療法の開発につながるものとして、大いに期待されるとしている。

過食が肝臓の糖代謝を亢進し体重増加を来たすメカニズム