トムソン・ロイターは12月4日、自社で保有する特許データベースを基に知財・特許動向の分析を行い、世界で最も革新的な企業/研究機関の上位100位を選出する「Top100 グローバル・イノベーター 2012」を発表した。

同賞は2011年より開始されたもので、日ごろイノベーションを生み出し、経済の発展に寄与している企業や研究機関を称賛することを目的としており、そこで働く研究者や知財関係者のモチベーションアップを目指すものと同社では説明する。

トムソン・ロイター 代表取締役 知的財産事業担当の冨井俊行氏

「AppleとSamsung Electronicsのスマートフォンに係わる特許紛争をはじめ、GoogleのMotolora Mobilityの買収や中国の世界の生産工場というポジションから知財立国への転換など、世界的に知財保護に対する動きが強まっている。同賞は、そういった知財に係わる人をクローズアップし、モチベーションを上げてもらい、ひいては経済の発展につなげてもらおうという趣旨で設立された」と同社代表取締役 知的財産事業担当の冨井俊行氏は語る。

トムソン・ロイターの考えるイノベーティブとは、他社の発明にも影響を及ぼす革新的な発明を数多く創出し、特許取得による権利化、保護を戦略的に実行していること。また、その知財戦略に基づき、グローバル市場において価値ある発明の商業化を積極的に進めていることを指すという。そのため、このTop100の選定においては、その企業や研究機関が保有する特許群に対し、「成功率」「グローバル性」「影響力」「数量」の4つを基準として判断しているという。

1つ目の成功率は、出願した特許が官公庁からどの程度認められたかといもので、具体的には直近3年間に公開された特許出願のうち、特許が認められたものの割合(=登録率)を示すもの。発明そのものの革新性に加え、特許としての権利化や保護下についても効果的な取り組みを行っている企業・研究機関が選出されている。

2つ目のグローバル性は、企業が出した1つの特許がどれくらいグローバル性を持っているかを表す指標で、中国、欧州、米国、日本の各特許当局で取得した特許数を計測したもので、どれだけグローバルに特許を取得しているのか、国際市場におけるビジネス戦略の基礎としての評価としている。

3つ目の影響力は、直近5年間において特許を取得している企業以外の企業の特許公報情報内で引用された回数をトムソン・ロイターのデータベース「Derwent World Patents Index(DWPI)」を用いて分析した結果。この指標が全体の50%のウェイトを占めており、ほかの3つの指標が残りの50%を等分割した割合になっているという。

そして4つ目の数量は、一定数以上のイノベーションを特許として権利化した企業(具体的には直近3年間で100件以上の基本特許を取得した企業)を対象にしたものとなっている。

こうして選出されたTop100が、どの程度世界経済に対して影響力を有しているかというと、例えば時価総額加重平均売上高はS&P500の同指標を3ポイント上回っているほか、時価総額加重平均研究開発費も同4ポイント上回っているとする。また、雇用創出としては、この1年間で12万4214人の新規雇用を創出し、株価は2011年末から2012年10月半ばまでで平均15%上昇しているとのことで、同社では技術革新に優れているだけでなく、さまざまな経済的なインパクト、雇用創出、中長期の経済成長に寄与していることが考えられると説明する。

また、第1回目の発表となった2011年はすべて企業であったが、今回の発表では韓国の2つの大学と、米国の陸軍および海軍が企業外として選出されている。

受賞企業の国別内訳は2011年は米州40社、欧州29社、アジア31社(日本は27社)だったが、2012年版では米州が47社、欧州21社、アジア32社(内日本は25社)となり欧州が減った分、米州が増える形となった。1つ注目なのは、韓国が前年の4社から7社・機関に増加していることだという。また、中国の企業や大学、研究機関についてはまだ影響力が低いということでランクインしていない。

分野別で見た場合、多い分野は半導体/電子部品で18%、続いてコンピュータハードウェアが13%となっており、以降、化学が8%、自動車、民生機器、通信、輸送機が各7%と続いている。日本単体で見た場合、コンピュータハードウェアを主要産業としている企業が多く、次いで機械、自動車、民生機器といった様相である。半導体分野やコンピュータハードウェア分野からの選出が多かったのは、このは市場変化が早く、競争がし烈で製品のライフサイクルが短く、利用者が技術発展を先導していくため、とするが、必ずしもそれ以外の業界が革新的ではないというわけではなく、例えば製薬・化学業界での研究開発投資額は他の分野に比べても非常に高く、業界内にも革新的な企業が多数存在するが、今回の選定基準とは異なるイノベーションモデル(少ない特許でビジネスを展開するなど)でビジネスが行われているためであると考えられるとする。

受賞企業の内訳(国・地域別)。上が2012年版。下が2011年版

受賞企業の内訳(産業別・グローバル)

受賞企業の内訳(産業別・日本)。左が2012年。右が2011年

なお、日本は2011年の27社から2012年は25社に数の上では減少傾向となっているが、国別で見ると米国に次いで2位となっている。そのため同社では、色々な見方があると思うが、存在感があることがうかがえる。知的財産の意義として、権利保護だけのものから、アセットクラス、投資対象や売り上げに結びつくモノに変わりつつある現状において1/4を占めていることは、今後の経済的発展に結びつく可能性がが高いものと考えられるとコメントしている。

Top100の企業・研究機関に渡されるトロフィー。日本企業の場合、基本的にはトムソン・ロイターのスタッフが手渡しをするために各企業所在地などに赴くという

Top100に選定された日本企業25社は以下の通り。

2012年のTop100に選出された日本企業25社。ちなみに前年から選出漏れしたのはダイキン工業、日本航空電子工業、コナミデジタルエンタテインメント、村田製作所、半導体エネルギー研究所、住友電気工業、住友ゴム工業、ヤマハの8社。新たに選出されたのは富士フイルム、ジャトコ、三菱重工業、新日鐵住金、リコー、TDKの6社となっている

また、Top100に選定された日本以外の企業75社は以下の通り。

2012年のTop100(日本企業25社を除く)75社