宇宙航空研究開発機構(JAXA)は11月30日、2010年5月21日6時58分22秒にJAXA種子島宇宙センターより打ち上げられた小型ソーラー電力セイル実証機「IKAROS」、および同機体に搭載された分離カメラ(子衛星)「DCAM1/2」がギネス世界記録に認定されたことを発表した。

認定された記録は以下の2件。

  1. 最初の惑星間ソーラーセイル宇宙機「IKAROS」(First interplanetary solar sail spacecraft)
  2. 最小の惑星間子衛星「DCAM1とDCAM2」(Smallest interplanetary subsatellite)

IKAROSは打ち上げ後の、2010年6月3日にセイル展開を開始、同6月10日に地球からの距離約770万kmの地点において、セイルの展張および薄膜太陽電池による発電を開始したことが確認されて以降、同6月14日に分離カメラ2(DCAM2)によるセイル展開状態(展帳状態)のセイル全景の撮影に成功したほか、同6月19日にも分離カメラ1(DCAM1)でも撮影実験に成功していた。

また、その後も光子加速実験やガンマ線バーストの観測に成功。2010年末にて定常運用を終了し、セイルの逆スピン実験なども成功させてきた。

さらに2012年1月6日に搭載機器の電力をシャットダウンする「冬眠モード」に移行していたが、同9月にはIKAROSからの電波を地上にて受け取り、冬眠モードから回復したことが確認された。

なお、今回の記録認定について、JAXA 月・惑星探査プログラムグループ IKAROSデモンストレーションチーム チームリーダの森治氏は、「ソーラーセイルは、宇宙空間で帆を広げて太陽の光の圧力を受けることで、燃料を使わずに航行する夢の宇宙帆船です。このアイデア自体は約100年前からあり、世界中で研究開発が行われているにもかかわらず、これまで実現されていませんでした。IKAROSという名に困難な技術に挑戦する決意を込めて、世界初のソーラーセイルの実証を目指してきた私たちにとって、このギネス世界記録TMの認定は誇りであり、これまでご支援いただいた皆様と共に喜びを分かち合いたいと思います。これを弾みにIKAROSの後継機となるソーラー電力セイル探査機の検討を進めていく所存ですので、今後ともご支援ご協力のほどよろしくお願い申し上げます」とコメント。また、同 DCAM開発とりまとめ担当の澤田弘崇 開発員も「IKAROSに搭載された分離カメラ1号(DCAM1)と2号(DCAM2)の2機はソーラー電力セイルの展開を確認し、軌道上での展張状態、形状を計測するために搭載し、その任務を成功させることができました。画像をIKAROS本体に無線で送る機能以外は極力削除し、超小型宇宙機として頭を悩ませながら設計し、開発した機器です。この分離カメラが送ってきた画像を地上で確認できたときが、私がIKAROSプロジェクトに携わってきた中で最も感動した瞬間で今でも脳裏に焼き付いています。非常に苦労をして開発した機器ですので、ギネス世界記録TMに認定されたことは感慨深いものがあり、開発にご協力頂いた関係者のみなさんに感謝致します。 今後も、深宇宙探査ミッションでこのようなユニークなミッションを実現できるよう、挑戦を続けていきたいと思います」とコメントしている。

ギネスの認定証を手にする左が森治 IKAROSデモンストレーションチーム長、右が澤田弘崇 開発員(DCAM開発とりまとめ担当)