慶應義塾大学SFC研究所、流通システム開発センター、大和コンピューター、神奈川工科大学、日本IBMの5者は、国際標準の識別番号体系を用いてモノを個体識別し、モノの場所と状況を共通のフォーマットでクラウド上に保存することにより、モノの生産者と消費者の交流や、複数の物流会社にまたがる出荷状況の追跡など様々なアプリケーションからデータを利活用できる共通基盤を構築し、国内および海外(香港)で共同実証実験を行ったと発表した。

「共通基盤」使用イメージ

5者が行った実証実験は、静岡県袋井市で収穫された果物のトレーサビリティならびにeコマースを実現する共通基盤を構築し、本年11月に収穫された果物を生産地から東京・大阪・千葉と香港まで追跡し、関連情報を共有するというもの。昨年度から本システムの構築を開始し、本年11月に収穫を開始した果物で、東京・神奈川・大阪・千葉・香港を最終到達地とする実証実験を行った。

実証実験では、静岡県袋井市で収穫された果物の糖度、農場の放射線量を測定し、生産者、収穫地、収穫日、食べごろ、出荷数といった生産情報とともに、生産者自身がFacebookページに登録。消費者は、これらの情報をFacebookページで閲覧でき、Facebookにリンクされたeコマースサイトから、果物を購入。収穫地から運ばれた果物は、出荷場で果物の個体識別子と梱包の個体識別子、物流業者の識別番号がeコマースの発注番号と関係づけてクラウドに登録される。こうすることにより、出荷された果物は、流通経路での配送状況や温度情報が追跡できる。

果物に付加したQRコード付き電子タグ

スマートフォンで読込んだ糖度と食べごろ情報

本実証実験のシステムの詳細は、「生産情報公開システム:果物にQRコード付の電子タグを付けることで、トレーサビリティ情報を取得できるだけでなく、消費者がQRコードをスマートフォンで読んで、果物に関する様々な情報(糖度、食べごろ、流通過程での温度情報、おいしい食べ方、農場の放射線量情報、生産者情報等)を参照」、「EPCISトレーサビリティ・システム:国際標準の識別番号体系(EPC)でモノを個体識別し、その場所と状況を共通のフォーマットでクラウド上に保存することで、様々なアプリケーションからのデータ利活用を可能」となっている。

共通基盤を実用化することで、生産の効率化のみならず、生産者の利益の向上や、消費者の安心・安全などに対する要求を満たすことができるようになり、第6次産業の発展に寄与することができる。また今後、自治体や農業生産者が、簡単かつ気軽に利用できる仕組み作りを検討していく予定。

実証実験における5者の役割は、大和コンピューターが、SIer、また農業法人の立場で、農作物に「情報価値」を付加して6次産業化できる共通基盤の構築を目指し、「生産情報公開システム」の構築と、情報の閲覧、生産者と消費者との交流を実現するFacebookページの作成、海外(香港)からも活用できるよう英語対応を実施した。

慶應義塾大学と神奈川工科大学は、共通基盤のメインシステムのひとつである「EPCISトレーサビリティ・システム」を開発、日本IBMは「コマースシステム」と「オーダー管理システム」を構築した。

「コマースシステム」では、高度な消費者向けeコマースサイトの運用に対応するソフトウェア「IBM WebSphere Commerce」を活用し、実証実験環境として、IBMのパブリック・クラウド・サービス「IBM SmarterCloud Enterprise(SCE)」を利用した。