国立天文台は11月19日、同組織を中心とする国際研究チームが推進する系外惑星・円盤探査プロジェクト「SEEDS」の一環として行われた直接撮像観測から、地球から170光年離れたアンドロメダ座カッパ星を回る巨大なガス惑星を発見したと発表した。

この惑星は木星の13倍の質量を持ち、太陽系の海王星の軌道より少し遠い軌道を周っている。主星の質量は太陽の2.5倍と重く、今までに撮像された太陽系外惑星の中では主星の質量が最も重いものだ。

成果をあげた国際研究チームは、米チャールストン大学、国立天文台、独マックスプランク天文学研究所、オランダ・アムステルダム大学、米プリンストン大学、NASAなどの研究者によって構成されている。研究の詳細な内容は、米国天文学誌「The Astrophysical Journal Letters」に掲載される予定だ。

今回発見された巨大なガス惑星「アンドロメダ座カッパ星 b」は、2012年の1月と6月にすばる望遠鏡におけるSEEDSプロジェクトの一環として近赤外線観測の対象となった。その結果、4つの赤外線の波長帯により確認された。

画像1は、アンドロメダ座カッパ星系の1.2から2.4μmの波長の近赤外画像を疑似カラーで表示したもの。中心の黒い円はデータ処理により取り除かれた中心星に非常に近い部分だ。そこから55天文単位(海王星軌道の1.8倍)の距離にアンドロメダ座カッパ星 bがある。

画像2は、左の画像を基にさらに「信号/雑音(S/N)比」の処理を施した画像。画像1にあったスペックル(中心星の強い光が漏れだしている影響)がかなり取り除かれており、左上の伴天体が際立って表示されている。

画像1(a)は、アンドロメダ座カッパ星系の1.2から2.4μmの波長の近赤外画像を疑似カラーで表示したもの。画像2(b)は、画像1を基にS/N比の処理を施した画像 (c) NAOJ

この天体を2回観測したところ、主星の周囲を回っていることがわかり、偶然に同じ方向にあった天体ではなく重力的につながっていることが確認された。近赤外線の4つの波長帯での明るさを比較して得られた惑星の色は、これまで撮像された10個程度の巨大ガス惑星とよく似ていることも判明したのである。

主星のアンドロメダ座カッパ星は「はと座運動星団」に属し、その年齢は3000万歳と推定されており、46億歳の我々の太陽と比べるとずいぶん若い恒星となる。若い惑星は惑星形成時の熱をまだ十分に持っているため、赤外線で明るく光る。そのため、若い恒星は太陽系外惑星の直接撮像において魅力的なターゲットとなるのだ。

それにも関わらず、太陽系外惑星の直接撮像、特に太陽系の惑星たちと似た軌道にある惑星の撮影に成功した例は極めて限られている。その理由は、惑星が主星に比べて圧倒的に暗いためだ。通常の撮像観測では、小さな淡い光の点である惑星が主星の光に完全に埋もれてしまうのである。

一方、SEEDSプロジェクトが行っている「高コントラスト観測」は、主星の光をできるだけ取り除くことにより、周囲にあるかすかな天体の光を見わけることが可能だ。

大きな質量の主星と巨大ガス惑星からなるこの惑星系は、一見、太陽系とは大きく異なるが、太陽系の起源と進化を最近の観測と理論に基づいて拡張したモデルでは、大きな主星は大きな惑星を持ち得ると考えられている。ただし、そのようなモデルの拡張には限界がある。もし主星が重くなり過ぎれば、その強烈な放射により原始惑星系円盤内での惑星形成が阻害される可能性があるためだ。

今回のアンドロメダ座カッパ星における巨大ガス惑星の発見は、太陽の2.5倍の重さの恒星の周りでは、まだ惑星を原始惑星系円盤内で形成することが可能だということを示している。

SEEDSプロジェクトチームは、さらに詳しく巨大ガス惑星の軌道や大気成分を調べるため、アンドロメダ座カッパ星bをより広い波長範囲で観測し続けているという。

また、アンドロメダ座カッパ星bの形成や軌道進化に影響を与えたかもしれない第2の惑星が存在するかどうかについても、引き続き調査が進められる予定だ。

なお今回発表された論文の筆頭著者である米チャールストン大学のジョセフ・カーソン氏は、「これらの追跡研究は、重い恒星周囲での惑星形成やスーパージュピターの生い立ちを解き明かす上で有用な手がかりをもたらしてくれるだろう」と、コメントしている。