北海道大学(北大)は11月8日、ウシなどの反芻動物の第一胃(ルーメン)に共生する細菌が2つの糖質ホスホリラーゼとオリゴ糖異性化酵素により、植物多糖のマンナンを分解することを見出したと発表した。

同成果は、同大農学研究院生物化学研究室の佐分利亘 助教と松井博和 教授、分子酵素学研究室の森春英 准教授らの研究グループによるもので、詳細は米国生化学分子生物学会誌「Journal of Biological Chemistry」に掲載された。

ウシなどの反芻動物の第一胃(ルーメン)では、共生微生物による植物多糖の分解・発酵が行われている。「Ruminococcus albus(R. albus)」はルーメンに存在する代表的な細菌で、さまざまな多糖の代謝関連酵素を持つことが知られている。このような共生細菌による植物多糖の代謝メカニズムを明らかにすることは、植物多糖の有効利用への有益な情報を与えてくれることから、研究グループでもこれまでに腸内細菌ではオリゴ糖異性化酵素がマンノビオースに作用してマンノシルグルコースを生じること、このマンノシルグルコースが特異的な糖質ホスホリラーゼによって加リン酸分解されることを明らかにしていた。今回、その糖質ホスホリラーゼの遺伝子配列を基にR. albusのゲノム配列を検索し、互いの配列類似性が低い2つの相同遺伝子を見出したほか、これら2つの遺伝子がコードする酵素の性質の詳細な解析を実行したた。

その結果、配列解析から見出した遺伝子のうち一方(RaMP1) は腸内細菌に見られたマンノシルグルコースに特異的な糖質ホスホリラーゼをコードしていることが確認されたほか、もう一方の遺伝子がコードする酵素(RaMP2)はマンノシルグルコースよりもマンノオリゴ糖に高い加リン酸分解活性を有する新規な特異性を有していることが確認された。この新規酵素の発見により、R. albusではマンノオリゴ糖がマンノビオースにまで加リン酸分解された後、異性化され、さらなる加リン酸分解を受けるという代謝経路が明らかとなった。

R. albusのマンナン代謝経路

また、この新規酵素はマンノース1-リン酸を糖供与体としてさまざまな糖質にマンノシル基を転移してマンノース含有オリゴ糖を合成できることも判明した。

RaMP2によるオリゴ糖合成反応

研究グループでは、このホスホリラーゼ(RaMP2)の発見により、多くのオリゴ糖の効率合成が可能になることから、今後はこれらのオリゴ糖の生理機能の解析を進めることで、新たな機能性オリゴ糖の開発に結びつくことが期待されるとしている。