生理学研究所(NIPS)と仁愛大学は9月27日、心筋梗塞発症直後に、心筋細胞表面の細胞膜にある塩素イオンの出入口となるタンパク質「CFTRイオンチャネル(嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子)」を活性化させると、心筋梗塞の進行を抑えることができることを、マウスを使った実験によって明らかにしたと発表した。

成果は、NIPSの岡田泰伸所長、仁愛大学の浦本裕美講師らの研究グループによるもの。研究の詳細な内容は、9月20日付けで「Cell Physiol Biochem」電子版に掲載された。

今回の研究では、マウスの心臓の左冠状動脈の虚血・血流再開(再灌流)に伴う心筋梗塞発症時に、CFTRイオンチャネルがどのような働きをするのかが確かめられた。

その結果、心筋梗塞発症直後にCFTRイオンチャネルを薬物で活性化させると、心筋の壊死の進行を抑えることができることが判明。一方で、CFTRイオンチャネルを持たない遺伝子改変マウスでは心筋傷害が悪化し、CFTR活性化剤投与によっても救済も改善もされないことも確認された。

また、心筋梗塞時の細胞破裂性(ネクローシス性)心筋細胞死は、CFTRイオンチャネルの活性化によって防御・救済されることがわかったのである。つまり、CFTRイオンチャネルを活性化させられれば、心筋梗塞の進行を抑えられることが確認されたというわけだ。

岡田所長によれば、心筋梗塞発症直後にCFTRイオンチャネルを活性化させることで、細胞から塩素イオンが放出され、心筋細胞が膨らんで死んでしまうことを抑えることができるものと考えられるという。「CFTRイオンチャネルを活性化させる薬剤を投与すれば、心筋梗塞の進行を抑制できると考えられる」とコメントしている。

以下の画像は、CFTRイオンチャネルの活性化で心筋梗塞の進行を抑制。マウスの心臓の左冠状動脈の虚血と再灌流によって心筋梗塞を発症させたとき、心筋細胞の壊死の様子。CFTRイオンチャネルを活性化させる薬剤を投与すると、心筋細胞が死んでいるところ(TTC染色で白色になっているところ)が大幅にみられなくなっている。

CFTRイオンチャネルの活性化で心筋梗塞の進行を抑制

心筋梗塞発症の際、実際に心筋細胞が死にはじめるのは、一時的に血の巡りが遮断された(虚血)後に、血の巡りが再開(再灌流)してしばらくしてからのことだ。再灌流直後は、心筋梗塞患者に治療を施すことができ、しかも薬物が病巣に到達し得るタイミングでもあるので、今回の研究成果は心筋梗塞に対する新しい治療法が開発される可能性を開くものと考えられると、研究グループはコメントしている。