それでも重要な「電話」

iPhoneには「高機能な携帯電話」としての役割があり、それは携帯電話会社の回線網に依存するかぎり続く。iOSには、「メッセージ」や「FaceTime」といった従来の音声通話に代替しうるコミュニケーションツールも用意されているが、電話番号にヒモ付けられた音声通話に数年以内で取って代わるとは考えにくい。iOS 6においても、電話関連の新機能は引き続き注目されるべきトピックだ。

iOS 6では、その電話としての機能を新たな切り口で拡張した。それは文章(テキスト)との連携で、音声通話というレガシーな技術に対するAppleからの新たな提案だ。

従来、着信に気付いてもすぐに応答できない場合には、放置して留守番電話に伝言を残してもらうか、着信を拒否するしかなかったが、iOS 6には「メッセージで返信」という新機能が用意された。着信時に画面を上方向へフリックし、「メッセージで返信」ボタンをタップすると、着信を拒否して相手に「お呼びしましたがお出になりません」と音声メッセージを流すと同時に、短文をiMessageなどメッセージサービス経由で送信してくれるのだ。

固定電話などメッセージを送信できない番号からの着信に対しては、「後で通知」ボタンをタップする。そうすれば、着信があったことが「リマインダー」に登録され、1時間後に知らせてくれる。設定を変更すれば、その場を離れたタイミングで通知を受けることも可能だ。

着信時に電話ボタンを上方向へフリックすると、「メッセージで返信」と「後で通知」という2つの選択肢が現れる

「メッセージで返信」をタップすると、候補のなかから相手に送信するテキストメッセージを選択できる

「後で通知」ボタンをタップすると、「リマインダー」に着信があったことを登録できる

「リマインダー」の画面から電話をかけ直すことができる

新設の「おやすみモード」

新設の「おやすみモード」も、電話機能と深い関係がある。このモードを有効にすると、ステータスバーに着きのアイコンが表示され、初期値では22時から翌朝7時まで、ロック中の着信や通知が知らされなくなる。設定次第では1日中着信を知らせなくすることも可能になるため、音声通話が苦手な向きには格好の新機能だろう。

この「おやすみモード」は「連絡先」との連携も考慮されている。おやすみモードが有効なときでも、「電話」の「よく使う項目」に登録しておいた相手(「連絡先」から選ぶ必要がある)、「連絡先」に作成しておいたグループなど、例外を設けて着信を許可することができる。

残念ながら、非通知電話を拒否する機能は搭載されなかったが、「おやすみモード」をうまく使えば迷惑電話拒否ツールとして活用できる。反対に、緊急時に電話がつながらないことを懸念する声が聞こえてきそうだが、同じ人から3分以内に2度目の電話があったときに通知する「かけ直しの電話」スイッチを有効にしておけば、対処は可能だ。プライバシーと緊急性のどちらを重視するかは難しい問題だが、携帯電話登場以前の状況を考えれば、利用者の裁量に任せていい部分ではないだろうか。……後編を読む

「設定」で「おやすみモード」をオンにすると、深夜から明朝までロック中の着信は知らされなくなる

おやすみモードで着信の通知を制限する時間帯は、自由に変更可能だ