NHKは8月29日、災害現場など電源供給が途絶えた状況においても、太陽光と風力のハイブリッド発電によって、動作に必要な電力を確保することができる可搬型・全天候型の「放送用ロボットカメラ」(画像1)を開発したと発表した。なおロボットカメラとは、遠隔地からでもパンやズームなどのリモートコントロールができるカメラのことだ。

画像1。ロボットカメラ本体。(c) NHK

主な特長は以下の4つ。1つ目は、風力発電には、従来の風車と比較して約2.5倍の発電量を得られる高効率な「レンズ付き風車」(画像2)を採用し、風車の小型・軽量化と共に1kWクラス(風速11m/s時)の発電量を実現していること。なお、このレンズ付き風車は九州大学と共同で開発したという。

2つ目は、電源部には大容量の蓄電池(画像3)を装備、天候の影響などで太陽光や風力による発電が困難となった場合でも約3日間の動作が可能なことだ。

画像2。レンズ付き風車。(c) NHK

画像3。蓄電池。(c) NHK

3つ目は、蓄電池の残量が少なくなった場合には、必要最小限の機器だけを動作させる省エネモードを備えたこと。省エネモードでは、ロボットカメラ映像を本体のメモリに蓄積し、リモート制御によってメモリから必要な部分だけを取り出して伝送することが可能となっている。

4つ目は、放送用の無線中継伝送装置(FPU)や携帯電話の高速データ通信、通信衛星を利用した映像伝送装置など、複数の伝送手段に対応しており、災害現場などからでもロボットカメラ映像をより確実に伝送することができることだ。

ロボットカメラ本体のサイズは、幅610mm×奥行き720mm×高さ1000mm。蓄電池部(1200Ah)は幅850mm×奥行き550mm×高さ800mm。レンズ付き風車のブレードの直径は1380mmとなっている。

現在、このロボットカメラは宮城県亘理町のビル屋上に設置されており、2012年8月29日から運用を開始している(画像4)。今後1年程度をかけて、ハイブリッド発電や蓄電池の状態などのさまざまな運用データを収集・解析し、今後のロボットカメラや非常用電源装置の整備に反映していく予定としている。

画像4。宮城県亘理町のビル屋上に設置されたロボットカメラのシステム一式。(c) NHK