コンピュータの表示装置を高精細化することは、そう単純なことではない。アプリケーションが個別対応するのならばともかく、OSレベルでサポートするとなると、移行措置や互換性確保などのためある程度の移行期間が必要となる。

OS Xでは、Tiger(v10.4)の頃から「HiDPI」と呼ばれる解像度非依存の表示モードが存在した。開発キットに含まれる「Quartz Debug」でHiDPIモードを有効にすると、画面は縦横それぞれ2倍、つまり従来比4倍の画素数で描画されるというものだ。あくまで開発者向けの機能として提供されていたが、そこからMacのディスプレイが高精細化されることを読み取っていたユーザは少なくない。

iPhone 4/4Sに先を越される形にはなったが、アプリケーションごとにウインドウサイズが異なるうえ、外部ディスプレイへの出力をサポートし、スマートフォンより大きいディスプレイサイズが求められる――仮に11インチだとしても"網膜級"の精細度であれば総画素数はiPhone 4/4Sのそれを大きく上回る――という事情を考慮すると、Macが後回しになったことはやむをえないといえる。

前置きが長くなったが、MacBook Pro Retinaディスプレイモデルの15インチディスプレイ(実サイズは15.4インチ)の精細感は、まさに"網膜級"だ。写真にしても、フォントにしても、ひと目で違いがわかる。画素数は2,880x1,800ピクセル、画素密度は220ppi(1ピクセルあたり0.115mm)と、iPhone 4/4sの326ppiには及ばないものの、従来モデルの1,440×900ピクセル=110ppi(1ピクセルあたり0.23mm)との差は歴然。まるで印刷物のような、といっても言い過ぎではないだろう。

一方、Intelのノート型機向けプラットフォームにおける最新フィーチャーも見逃せない。CPUは第3世代Coreシリーズ"Ivy Bridge"に属するクアッドコアの「Core i7」、ディスクリートGPUには"Kepler"ベースの「NVIDIA GeForce GT 650M」と、いずれもこの4、5月に発表されたばかりのアーキテクチャだ。逆にいえば、Retina品質の描画システムにはこれほどのパワーを要するのかもしれない。

本体左側面にはThunderbolt×2とUSB 3.0×1を配置。MagSafeは新形状となり、FireWire 800は廃止された

本体右側面にはUSB 3.0×1とHDMI×1、SDXCカードスロット×1が配置されている

光学ドライブの廃止に伴い、従来のイジェクトキーの位置に電源ボタンが配置された

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