富士通セミコンダクター(FSL)は、RFIDタグ用IC 「FerVID Family」のラインナップに、9KBの強誘電体メモリ(FRAM)を搭載したHF帯RFIDタグ用IC「MB89R112」を発表した。

RFIDタグ用ICでは、自動車、電気製品の製造管理や、航空機、道路、建築、土木などのメンテナンス用途で、さらなる大容量メモリの要求がある。一方、RFIDをマイコンやセンサと繋げて、製品の動作設定を無線で設定したり、あるいは流通過程での環境履歴を無線で取得したりするなど、新たなニーズが生まれている。こうした要求に対応するため、HF帯では他社にない9KBの容量を搭載したFRAMとシリアル・インタフェースSPIを搭載した今回の「MB89R112」を開発したという。

「MB89R112」は、業界標準のISO/IEC15693に準拠した近傍型パッシブRFIDを構成している。9KBのメモリのうちユーザーメモリとして使用できる8KBのメモリは、32バイトのブロックを256個有する構成で、ISO/IEC15693に規定されるリード・ライトコマンドで8KBの全領域にアクセスが可能。8KBのデータの書き込み時間は約4秒で、E2PROMを用いた製品の6倍以上の高速書き込みを実現している。RFIDタグに記録できる情報量が増えることにより、製品の製造から物流、使用から廃棄までのライフサイクルのトレーサビリティ管理や、メンテナンス記録を現場で残すデータロガーとしての用途への利便性が向上する。

また、シリアル・インタフェースSPIを搭載しており、マイコンとの接続が可能。マイコンからFRAMの8KBのユーザーメモリへSPIを介してアクセスが可能なので、共通のメモリ領域をデータロガーとして使うことや、マイコンの動作設計を変更するパラメータ領域として使うことができる。例えば、物流の環境ログや装置の異常検知、電子表示の変更、センサのしきい値変更、ファームウェアの設定変更など、これまでにない利用方法にも対応できる。

なお、同製品は、2012年8月中旬よりサンプル出荷を開始する予定。

9KバイトのFRAMを搭載したHF帯RFIDタグ用IC「MB89R112」