シーメンスPLMソフトウェアは6月20日、同社が6月12日(米国時間)に発表した3D CADソフトウェアの最新世代「Solid Edge ST5」の新機能説明および事業の概要説明などを行った。

Solid Edgeのビジネスはチャネルパートナービジネスが90%を占めており、2011年通期で見てライセンス販売は30%の増加、日本国内ではそれ以上の増加率を示しているという。また、新たな取り組みとして、米国のLocal Motorsのコミュニティ向けに特化した「Solid Edge Design1」といった安価な製品の提供も開始しており、どのような形での提供となるかはまだ未定ながら、日本での展開も検討をしているという。

同社の3D CAD製品関連向け戦略としては、企業として強いIT統制を必要とする分野をMLE(Medium-Large Enterprise)、強いIT統制を必要としない分野をSMB(Small-Medium Enterprise)と定義し、その双方で、Light-Userを狙っていくとしている。

例えばMLEでは、大企業の中における少人数チームや、設計用途ではないが3D CADデータを活用するようなCADユーザー、一方のSMBではマルチCADへの対応や設計以外のCAD利用などでの活用を想定している。

MLE、SMB双方にLight-Userは存在し、そこをSolid Edgeでどう取り込んでいくかが同社の戦略となってきている

こうしたLight User市場へのアプローチの1つとして、同社では2011年5月より月額1万円(12カ月契約から)で利用可能な「Solid Edge DesignPAD」の提供を開始。従来の提供形態とは異なるオンラインでのサポートを中心としたものながら、現在まで順調にライセンス数を増やしてきているとのことで、2012年の秋ごろをめどに第2世代となるソリューションの提供を計画するほか、さらにその先の予定としてクラウドベースでの提供なども検討を進めているという。

「Solid Edge DesignPAD」はオンラインでの提供形態の第1弾。この経験をもとに2012年秋ごろをめどに第2弾のサービス提供を計画している

一方の最新バージョンとなる「Solid Edge ST5」もさまざまな機能拡張がなされ、より設計者などが活用しやすくなるようなものとなった。

ST5の開発の主眼点は「シンクロナス・テクノロジーの高速化と自由度の向上」「定常伝熱解析を搭載」「図面作製をさらにシンプルに」「1300を超える顧客要望の実現」の4つ。このほか、複雑なデータの管理をシンプル、かつ簡単に行うことを目的としたMicrosoftのSharePointベースの「Solid Edge Insight XT」の提供やiPadで図面データなどを閲覧することが可能なビューワの提供など、周辺環境の拡充も行われた。

ST5では、さまざまな機能が新たに追加されたわけだが、中でもマルチボディをサポートしたことにより1パーツ内で複数のボディを、個別部品のようにハンドリングすることが可能となったことが1つの大きなポイントとなっている。これにより、複数のデータを取り込みつつ、形状データ以外の部分を除いてアセンブリデータとして扱えるようになり、ファイルサイズを抑制しつつ、複数のパーツとして扱うことも可能となった。このため、外部にデータを渡す際でも、形状データ以外のデータを提供することなく、セキュリティを確保しつつ、データのやりとりが可能になる。

マルチボディのサポートにより、データサイズを低減しつつ、パーツをアセンブリした状態で外部に提供したりすることも可能となった

また、ソリューションマネージャーにより、シンクロナスでの編集時に、編集内容をエラー原因をオレンジ色で表示するなど、グラフィカルに表示することが可能となった。

ソリューションマネージャーにより、エラー原因をパッと見でわかるようになった

さらに、2次元スケッチとアセンブリの高速化も実現。2次元CADのユーザーが3次元CADに乗り換えることを想定して加えられた機能。これまで、2Dレイアウトを3Dに取り込むときに、1本の線に見えても、実は複数の線に分かれる場合があり、それを別々の線として認識してしまった場合、処理が重くなるといった課題があった。今回の機能により、こうしたスケッチの線を自動的に1本の線であるといったように認識し、処理時間の短縮を実現できるようにした。ユーザーテストでは、例えばエレメント数8800の場合で前世代のST4では6分30秒かかっていたものがST5では2秒、6万8283の場合で、ST4で63分であったものがST5で1分58秒で展開できるようになったという。

このほか、シミュレーションの拡張として、定常伝熱解析ができるようになった。もともとNXではできていたが、ST5での対応によりSolid Edgeでも簡易的ながら熱解析と構造解析の連成が可能となった。加えて、外部データを取り込んだ際に、平面ではなくなってしまう面などが発生してしまい、そのデータの修正が必要となる場合などがあったが、そうした面の自動修正機能なども追加された。

定常伝熱解析のサポートや、形状チェック機能なども加えられた

周辺機能であるInsight XTは、近年の部品データの中に、3次元データのほか、設計仕様書データなどが含まれるようになってきた事象に対応することを目的としたもの。設計変更や図面承認依頼なども行うことができ、関連するWordやExcelなどのドキュメントを同時にグラフィカルなインタフェースで管理することが可能となるため、手軽にデータ管理を行うことができるようになるという。

設計仕様書データなどを、別ソフトなどを用いずに管理することを目的としたInsight XT

なお、Solid Edge ST5、Insight XTともに日本での提供開始は2012年8月末から9月頭ころを予定している。