映画学校ニューシネマワークショップは、創立15周年を記念してNCWクリエイティブセミナー「映画監督をめざそう!」を開催。同校のOBである深川栄洋監督、森義隆監督がゲストとして登場した。

映画『ガール』の深川栄洋監督(左)と、映画『宇宙兄弟』の森義隆監督(右)

深川栄洋
1976年千葉県生まれ。2009年、映画『60歳のラブレター』でその確実な演出力が評価され、ヒット作品となる。2011年には『白夜行』、『洋菓子店コアンドル』、『神様のカルテ』と3作品が全国公開された。最新作は奥田英朗の同名小説を映画化した『ガール』。
森義隆
1979年埼玉県生まれ。テレビマンユニオンに参加し、『ガイアの夜明け』、『わたしが子どもだったころ』などドキュメンタリー番組を中心に演出。2008年、『ひゃくはち』で長編劇映画デビューした。最新作は超人気コミックの映画化で、小栗旬、岡田将生主演の『宇宙兄弟』。

プロデビューから、『ガール』/『宇宙兄弟』、それぞれの切符をつかむまで

ニューシネマワークショップ卒業後、テレビ番組やCM、映画の企画・制作を行う「テレビマンユニオン」にて、テレビ番組の制作に数多く携わった森監督。学生時代に経験した舞台、映画の制作とは違い、テレビ番組の制作では視聴者とつながる感覚を得ることができなかったという。このときのことを「テレビの"消費されていく"という特徴が自分には合わなかった。虚しかった」と森監督は表現した。そんな時、かつて自身が監督した映画『畳の桃源郷』に出演してもらった役者と仕事現場で偶然再会。懐かしく話すなかで"もう一度映画をやりたい"という強い思いを抱いた。その後、再び映画制作を始め、高校野球を題材にした脚本の映画化にこぎつくことができた。これが自身のヒット作『ひゃくはち』だった。

映画『宇宙兄弟』の監督依頼が舞い込んだのは、そんな『ひゃくはち』を見た東宝のプロデューサーからだった。同作のプロデューサーや原作者は、森監督と同世代。"この作品は面白くなる"と直感的に思ったと当時を振り返る。しかし、漫画『宇宙兄弟』は累計1,000万部を発行している人気漫画。当然、いくつもの映画会社から映画化の話が舞い込んでおり、その権利をめぐり、東宝も争ったとのこと。最終的に森氏が監督することになった決め手は漫画『宇宙兄弟』の原作者の「森監督なら」という一声だった。

本企画の難しさは、宇宙兄弟の原作自体がまだ連載中であること。そこで映画の脚本については、連載を短くするのではなく、漫画の第一巻の話を膨らませていく方針がとられた。自分が行ったことのない"宇宙"という世界を描いたことについて森監督は「宇宙とは、実はそんなに遠くない未来の話。月は人間が一度行ったことのある場所なので、甲子園に対する憧れと同じような感覚だった」と『ひゃくはち』の監督ならではの表現で、その感想を語った。

一方、深川監督は、映画『狼少女』を監督後、映画監督のオファーが来るようになり、代表作『60歳のラブレター』へとつながっていった。インディペンデント系の映画は、監督の作家性が中心にあることが大事とされるが、メジャーは企画で人を集められるかが大事とされる。その中でも自分の作家性を出せる人が一流の監督と言われると深川監督は話した。

最新作の『ガール』は深川監督が手掛けたこれまでの作品とは異なり、女性を中心とした映画だ。海外ドラマ『SEX and the CITY』の日本版、大人も見れるロマンティックコメディーがテーマとなっており、深川監督は自分には難しいと考え、一度話を断ったそうだ。しかし、担当プロデューサーから「そう思っているのは君だけだ」と言われ、自分が知らない自分を引き出そうとしてくれているプロデューサーの意向を汲み、引き受けることにしたのだという。それから、普段読まない女性雑誌を読んだり、いろんな女性に話を聞いたり、女子会に参加して、女性の心理を学んだ。その結果、女のひとがなにをどう考えているのかが分かってくるようになり、どんな映画にすればいいのかが分かり、映画『ガール』を女性の動物図鑑を作るような映画に仕上げ、男性でも楽しめる映画に仕上げたとのこと。

映画『宇宙兄弟』/『ガール』は全国公開中。映画好きの学生だったふたりが手掛けた全国ロードショー作品を是非、1度、観てみてはいかがだろうか。