IT関連の総合イベント「Interop Tokyo 2012」が6月13日~15日、幕張メッセで開催された。総合イベントということで、テーマは「エネルギーマネジメント」「IPv6」「ビッグデータ」など多岐にわたっていた。今回は、アジアを中心とした市場の変化とそれを支えるシステム基盤に関する講演「インターネット アジアビジネスの最前線~ケーブル、ネット、データセンター、クラウド」の模様をお届けしたい。

前段では、チェアマンを務めるPACNET Global Singaporeの石井秀雄氏が、電力需要に伴うシステムの敷設の状況に関する背景と今後の見通しを示した。石井氏は、今ネットワークインフラを基盤とした市場・業界の変革期を迎えていると述べ、その要因を「トラフィックの増加に伴うデータセンターを核としたシステム構成の進化」「日欧米の3極で構成されていたビジネスが、アジア全域へ拡大したこと」と指摘した。また、トラフィック増加の要因としては、「スマートフォンの普及などによるモバイル通信の拡大」「FTTHに代表されるブロードバンドの一般化」「映像系サイトの多様化」「CDN需要」が挙げられた。

石井氏は、「近年のネットワークインフラに対する需要の変化としては、10kvaにも及ぶ電力量に対する需要の増加、自然災害に備えたディザスタリカバリなどが顕著」としたうえで、そうした市場の需要に備え、「アジアを中心に80Tbps以上の帯域が敷設されている」と整備状況を示した。このため、アジアを取り巻くビジネスが拡大するのは必然と強調した。

石井氏が示すネットワークインフラの全容を受け、NTTコミュニケーションズ、KDDI、エクイニクス・ジャパンの3社が最新状況と戦略を示した。

NTTコミュニケーションズは過去に地震や土砂崩れの発生した場所を避けてケーブルを広域に敷設しており、特に日米間約9,500kmにおいては独自の伝送方式で100Gbpsの通信に成功している。今後は2013年を目処に最新技術を導入し、現在の3.2Tbpsから10Tbps程度まで引き上げるという。

KDDIは「テレハウス」というデータセンターを運営しており、近年ではアジアを中心に現地で力のある会社とパートナーを組んで拠点数を拡充している状況を示した。現地法人とタイアップすることで、品質や電力確保が円滑化するという。

IXとデータセンターと付随サービスを中心に展開するエクイニクスは、世界約700のネットワークや300社以上のクラウドプロバイダーとのパートナーシップを得て、稼働率99%以上を実現。世界各国の顧客に応じたソリューションを提供する経験を踏まえ、アジア諸国の特徴を示しながら、日本が抱える問題について指摘した。

聴講者で埋め尽くされた会場。チェアマンはPACNET Global SingaporeのVice President 石井秀雄氏

スピーカーは、左からエクイニクス・ジャパンの代表取締役 古田敬氏、NTTコミュニケーションズのサービス基盤部部長 伊藤幸夫氏、KDDIの鹿野浩司氏

データセンターは不動産ではなくビジネス加速を担う電力供給源に

「インフラからサービスへの脱却へ」と強調する古田氏

エクイニクス・ジャパンの代表取締役 古田敬氏は、現況を掌握するために、ネットワーク・トポロジーを用いて地点間の伝送状況を図示し、「2002年はアジアで東京一極集中していたのに対し、2010年はアジア諸国にトラフィックが分散し、それぞれの数値が同等水準に達していることは明らか」とした。その要因には、「中国やインドのビジネスにおける海外との取引が増加していること」、「コロケーションなどで特に行政が企業や事業を誘致していること」があるという。

古田氏は、「一括りにアジアと言っても、状況は国により異なる。シンガポールでは多国籍企業を誘致していることから海外との通信が活発であり、インドでは証券取引、香港では金融サービスが成長著しく、中国では大規模なデータセンターが建設されている」とアジア全域を俯瞰し、それぞれの特徴を踏まえたビジネス形態やパートナーシップが必要と繰り返した。

さらに、「近年では、データセンターが各国に閉じた使われ方ではなく、国際トラフィックの拡大や商取引の変化に伴い、用途が多角化している」と踏み込んだ。シンガポールは電気代が高い一方、東京は総体的にはデータセンターの運用コストが安く、中国の8倍にも及ぶ1兆円の市場を形成している。「ただ、日本はアジアのハブには名実ともなり得ていない」と古田氏は示唆する。「データセンターに求めるものは電力をより大量に安く買うことであって、不動産を買うことではない。顧客は『1Kwいくら?』という考え方にシフトしている。今後、ますます拡充し高度化するデータセンターの運用に必要な発想は『インフラ』ではなく『サービス』。そうした点で、シンガポールは総体的に需要が高いと言える。どうパフォーマンスを最適化するか、それが供給側の付加価値になる」と顧客サイドとベンダーサイドの需要を総括。

限定的なインフラに対し、ユーザーがグローバルに拡大した今、どうビジネスを加速させるかが課題と締めくくった。